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第7話
「くそっ」
なんだよ……。
俺は呆然と指先にぶらりとぶら下がる細いチェーンを見つめた。
ペンダント? と思ったけど、よく見ると違う。
「……これ、指輪?」
細いチェーンの先に付いていたのは、ペンダントトップじゃなくて、銀色に光る指輪。
「まさか……」
違う、と思ったけど、リングの裏に彫ってあるイニシャルを見て、それが間違いなんかじゃないと確信した。
これは、あの時千春に渡した指輪だ。
だけど、アイツは千春なんかじゃない。
誰なんだ。
俺は考えるのを止めて、雪斗の後を追った。
何故かは分からないけど、このままアイツを行かせたくない。
ホテルを出て、駅方面へ向かう。
だけどもう終電も出た後だ。 そう思いながらも駅までのメインストリートの歩道を走った。
見える限りでは姿が見えない。 3本路地を横目に通り過ぎ、4本目の暗がりに華奢なシルエットが佇んでるのが視界に入った。
「なんで追いかけてくるんだよ」
雪斗は暗がりで顔を隠すように俯いて、俺を見ようともしない。
「お前が逃げるからだ」
「僕は千春兄さんじゃないよ」
「分かってる」
俺は、華奢な肩を抱き寄せて、泣きじゃくる雪斗の顎を掬い上げ触れるだけのキスをした。
「お前は雪斗だ」
幼稚園に迎えに来る千春の母親の後ろに、いつも隠れていた、千春の弟。
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