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ep.2
トイレの手洗い場で汗まみれになった顔を洗い、濡れたままの顔を鏡で見た──
「ひどい顔……」
疲れ切って、不満に満ち溢れてる最悪の顔──。
重い足でメディア部に戻るとカメラをバッグから出している夏目の姿があった。
恐る恐る夏目のそばに近付き、声を掛ける。
「夏目さん……さっきは、その──」
「お前は一体なにものなの?」
夏目は呆れると言うより子を叱る親のように真っ直ぐと真柴を見ていた。
「俺はね、何もあのガキに体を売れとかヘコヘコ頭を下げろとか言ってんじゃないんだよ、あのガキとコミュニケーションを図れって言ってんの」
言葉をなくして俯いている真柴の頭をポンと軽く叩くと夏目は自分の椅子に腰掛けた。
「傘って、なんの話」
「あ……、あの子が俺が傘なくて困ってる時に……自分のを譲ってくれて……」
「嬉しかったんだろ? だから自然と礼も言えた。それと同じなんだよ真柴。俺たちの仕事は自分からシャッター閉めちまったら何にも得る事は出来ないんだ。自然に相手に興味を持って、自然に会話する。ガキの生意気なんてあの歳の頃の標準装備みたいなもんだろ。どうしてもそれに腹が立つなら思い切って同じ目線でキレちまえよ。黙っちまうよりよっぽど潔い良い」
「──すみません、でした……」
夏目の言葉はその辺の上司のそれより真柴にズッシリと重く感じた。今までは誰も真柴をそんなふうに叱ってくれなかったからだ──。
会社は期待していない奴には叱りもしない──
だけど夏目さんは──
「謝るならあのガキにな。礼言っといて逃げ出しちまったんだから、次に会えたらきちんと謝っとけよ」
「──はい……」
メディア部に臨時の席を置いてからあっという間に5日が過ぎた。
悲しいかな、身体が以前よりうんと軽い。残業は夏目が面倒がってしないので2年ぶりにほぼ残業のない生活が続いている。
苦しいネクタイもボタンを締めたタイトなジャケットも今の真柴には存在しない。
ストライプのブルーのシャツにくるぶし丈の黒いパンツに白のスニーカー。それが今日の真柴の姿だ。
エレベーターホールで偶然会った奥秋に腹の底から羨ましがられた。
「顔色のいいお前、久しぶりに見たよ」と奥秋は嬉しそうに笑った。
「栗花落くんお昼どうするの?」
夏目班の同僚が財布片手に声をかけてくれた。
「あー、コンビニかな?」
「そっか、また今度皆でランチ行こうね」
「ありがとう」
普段同僚ともろくに話さない真柴だったが、夏目班の皆はαやΩと言った隔たりが一切なく、ただの同僚としてフラットに接してくれる。それはきっと上司の夏目がきちんと部下をコントロール出来ている証だ。
──夏目さんて、人望あるんだよなぁ……。
コンビニに着くと店から出てきた三人組の中に知った顔がいて目が留まる。
「傘の子……」
その声に反応して彼は友人に向けていた顔を真柴に向けた。
「あーっ、逃げた人!」
彼の大きな声に友人たちも驚き思わず全員が真柴を見た。
居た堪れないながらも真柴は「ごめんなさい」と囁く。
彼は早々に機嫌を良くしたのか、ニコニコと笑って真柴を見ている。
「何、キイチの知り合い?」
「どこの大学の人?」
純粋に首を傾げた少年に真柴はがっかりした。
「……あの、俺社会人なんで……」
「ええっマジで! すんませんっ」
「見えねーよなぁ、俺も初めて見た時暫くサラリーマンって気付かなかった」
「えっ?」と、真柴はもちろん聞き逃さなかった。
「お昼? サラリーマンってその辺の飯屋に行くのかと思ってたけど真柴さんは違うんだね」
「早く食うの苦手だから……」
「なにそれ可愛いの」
ひゃははと高い笑い声が上がる。
ジトリと睨んだ真柴のことなどお構いなしにキイチと呼ばれた彼は馴れ馴れしく真柴の顎先を指で持ち上げた。
「お口、小さいもんね」
「エロッ、キイチの悪い癖が早くもっ」
きゃいきゃいと何が面白いのか若者たちは白けた顔の真柴などそっちのけで騒いでいる。
真柴はあえてそのままの格好で青グレーの瞳を覗き込んだ。
「あのさ、写真。撮らせて貰えないかな」
「ふーん、なんに使うの? アンタのオナニーのおかず用?」
相変わらず外野たちは猿みたいな声で笑っている。
「この街に住む若者たちを撮りたいだけ。普段ならすれ違って知り合う事すらない人たちと触れ合ってそれを写真にするんだ」
「触れ合う? へぇ、どんな風に?」
吸い込まれそうな瞳が一層真柴の顔に近付いてきた。
パチンと乾いた音を立ててキイチの手が振り払われると同時に「イテッ」と悲鳴が漏れる。
「そんな綺麗な顔に産んで貰っておいてチンコに脳味噌でもついてんのかっ思春期の中学生レベルだな! もう結構です! さようなら!!」
真柴はそう言い放つとコンビニに入る事なくキイチに背を向けズンズンと会社へと踵を返した。
「何がコミニケーションだよっ、シモの話しかしねーじゃねぇかっ!」
真柴は頬を膨らませながら会社に着くまでブツブツと愚痴をこぼし続けた。
「それはそれは見事な収穫でございましたね」
「──すみません……」
午後から出社の夏目に盛大に呆れられながら真柴はこれ以上はないくらい肩身を狭くした。
「まあ、いいんじゃねぇのか。言いたいこと言えたんだ。お前もこれでスッキリしたろ」
「そりゃ……でも、彼は今まであった人たちの中で飛び抜けて魅力的です──容姿が、ですけど……」
「仕方ねぇ、あの容姿も中身もセットであいつなんだから」
その広い心の解釈にますます真柴は自分が恥ずかしくなってくる。
「ぁあ〜、俺はなんであんなこと……」
「悔やむな悔やむなっ、あいつとは縁がなかったってことだ」
「あんな、逸材だった、のに……」
「確かにな、βの俺にだってわかる。あいつは世にいるαの中でもとんでもないカリスマ性を秘めてる。10年後のあいつを考えると末恐ろしいね」
真柴はその言葉に黙ってしまった──。
Ωである真柴は彼に近寄られただけで足がすくんだ。キイチの手を強く払った後、叩いた手はずっと震えていたし、あの時の怒鳴り声だって多分震えてただろう──。
年下の子供相手でこんなザマだ──もし自分が彼と同じ歳だったら今頃恐ろしくて目も合わせられていないだろう。
帰宅してすぐに真柴は安定剤を口にした。
恐ろしいαの気に触れて毎日飲んでいる低容量ピルだけでは気持ちが落ち着かなかったのだ。
やけに喉も乾いて、真柴はグラスに注いだ水を全て飲み干す。
「……あの子、キイチって名前なんだ……もっと外国人チックなの想像してたかも」
グラスの縁を唇にあてて、ぼんやりと真柴はあの印象的な瞳を思い出していた。
ふいに携帯の着信音が部屋に響いて真柴は現実に戻された。慌てて机の上にあったそれを取ると画面には見たこともない番号が表示されている。
仕事柄知らないからと言って取らないわけにもいけないので真柴は応答をフリックした。
「──もしもし?」
真柴がスピーカーに意識を寄せると聞いたことのある声がすぐに返ってきた。
『やほー、こんばんわー』
──電話の主は驚異のα男子高校生、キイチだった。
「え?! なんでこの番号……名刺渡したっけ?」
『ううん、これは夏目のオッサンからの賄賂』
──あんのぉタヌキっ!
真柴は透かした顔で自分のことをまんまと騙した男を思い出していた。
「てゆうか賄賂って、どういうこと?」
『俺の写真が欲しくばアンタの電話番号を寄越せってね』
「俺の個人情報はどこで守られるんだ……コンプライアンス遵守の崩壊だ……」
電話の向こうであの高い笑い声が響いている。
「なんか用? 悪いけど俺は謝んないからね」
『ホラ、アンタ言ってたじゃん。俺と触れ合いたいって』
「もう結構ですとも言った」
『また逃げるの? 大人のくせにだらしいない』
「はぁ〜〜?!」
──わかっていた。自分は中学生どころか、小学生並みの知能だった。
真柴は高校生相手に簡単に挑発され簡単に陥落し、それら全てが相手の罠だと気付いて後悔する頃にはもう何もかもが手遅れだったのだ──。
30分もしないうちにエントランスのインターフォンが鳴った。それを室内の画面で確認して真柴は素直にロックを解除した。2分してドアのインターフォンが鳴る。
真柴は応答せずに直接玄関に向かいドアを開いた。
「こんばんわ」
その先にいたのは私服姿のキイチのだった。
ワイドフィットなパステルパープルのTシャツから白い生地の裾を覗かせ、生成色のシェフパンツを履き、足元はパンツと同系色のローカットスニーカーだった。
──モデルみたいだ。
ファッション誌から切り取ったみたいにキイチの存在感はどこか現実離れしていて、本当に今目の前の同じ世界線にいるのか不安になるくらいだった。更にこんなに存在感のあるαに真柴はかつて出会ったことがなかったのだ。
「おのー、あがってよろしいですか?」
「あっ、ごめん。どうぞ」
ポカンと無反応のままだった真柴にキイチは痺れを切らしてお伺いを立てると同時に既に廊下に一歩踏み入れていた。
「あっ、お茶淹れるよ!」
「お構いなくー」
自分の部屋なのにキイチが先を歩いていて、後ろから真柴が慌てて声をかけていた。
追いかけた背中が急に止まって真柴はそのまま肩に頭をぶつけた。
「え、なに?」ぶつけた頭を撫でながら真柴は見上げる。
「風呂はもう入ったの?」
「風呂? あ、うん、入った」
何の質問なんだろうかと不思議に思いながらも真柴は素直に答えた。
「リョーカイ」
キイチはそう告げると少ししゃがんで真柴の両太腿に腕を巻きつけるといきなり身体を持ち上げた。
「ひゃあっ!」
小さい子供でも持ち上げるようにキイチは楽々と成人している真柴を肩に抱えて運び始める。
「何してっ、離せっ、おいっ!」
リビングの隣に続く寝室の引き戸を片足で器用に開けるとキイチはベッドに真柴を投げた。
仰向けになったままの真柴の上にすぐに、キイチは体重をかけてくる。
「ちょっ、何考えてっ……」
「何って、アンタΩなんだろ? 俺が気づいてないなんて流石に思ってなかったよね?」
「それは……思ってないけど、それがどうしてこうなるんだ」
「はぁ?? 俺はαでアンタはΩ、それ以外何があるっての」
真柴はキイチの言ってる意味が理解できなかった。
そんな本能的な事だけで俺たちは生きてるわけじゃない──
αやΩである以前に人間だ。知能もあって理性だって、それに常識だって持ち合わせてる。
──何より一番大切な、人としての感情だって持っているのに……。
「やめろよっ、こんなっ……」
上に掛かるキイチの身体を必死に押しのけるが体格差がありすぎてびくともしない。
「10代の処女じゃあるまいし何かわいこぶってんの、そういうの全然萌えないから」
「うるさっ……」
面倒臭くなったのか、キイチはさっさと真柴の口をキスで塞いでろくに抵抗できていない相手からさっさと服を剥ぎ取った。
「──やべ、いい匂い……」
真柴の首筋を嗅いでそう口にしたキイチからもさっきまでは感じなかった香りが真柴へと届いてくる。
──発情期 ?
そう気付いた頃には手遅れだった。
真柴は全身から汗が吹き出し、一気に体温があがる。真っ白な肌は全身がピンク色に染まり、キイチを誘うように無自覚に身体をうねらせた。
「なんで……薬飲んだのに……」
薬で発情期 の周期を安定させていたはずなのに、頓服で飲んだ薬も虚しく真柴はあっという間にヒートに突入した。
直接肌の匂いを求めたいのかキイチも着ていた服を全部脱ぎ散らかし、真柴の首筋に深く顔を埋めては甘い吐息を漏らした。
何一つ抵抗できず、真柴はその匂いと体温だけでおかしくなりそうだった。なぜだか涙が出て、キイチに抱きしめられると人間の理性が壊れて消えていく──。
キイチが肌を甘噛みするたび真柴は甘く吐息を漏らした。胸の尖った部分を何度もきつく吸われて真柴の腰はジンジンと疼く。
胸を責められただけで真柴の秘部は愛液で濡れ、キイチが嬉しそうにそこへ指を這わせた。最初は縁を擦るだけだった長い指が真柴の中にゆっくり入ってきて何度も抽送を繰り返すと、滑りの良くなった奥まで一気に貫いては激しく貪る。
「あっ、あっ……ん、んっ」
掻き回されるたび、無意識に腰が一緒にグラインドする。2本に増やされた指が何度も真柴の感じる場所を刺激してきて真柴の嬌声は止まらないままだった。
真柴はあまりの刺激に口から漏れる涎を飲み込むことができずに顎へといやらしく滴らせていた。
「やっ!」
刺激の怖さに目を瞑っていた真柴の目がパッと開いた。さっきまで指が張っていた場所に突然生温かい生き物が入ってきたからだ。
赤く長い舌が入り口を何度も嬲り、次第に真柴の中を美味そうに蹂躙し始める。
「だめっ、そんなっ、だめっ……」
卑猥な音が真柴の耳にまで届く。ぐちゃぐちゃと音を立ててキイチの頭が激しく動くたび真柴は気を失いそうになっていた。
「あっああっ、だめっ、イッ……イッちゃう、あっ……」
感じたこともない快楽の波が下から迫り上がってきて頭に到達するあと少しのところで真柴の中からキイチはいなくなった。
「やっ……」
急に冷たい空気に晒され、真柴は苦しそうに鳴いた。
「エロ……ここ、すっげぇヒクヒクしてる」
両膝を大きく開かされ、上からキイチが舌舐めずりしながら真柴の恥ずかしい場所を覗き込む。
キイチの完全に反り上がった雄が真柴の視界に入り全身に鳥肌が立った。
「キイチ……のすごぃ……」
「ほんと、真柴のこの小さいお口にちゃんと入んのかな?」
意地悪げにキイチは自身の雄をひくつく真柴の秘部にぴたりと当てた。それだけで真柴は全身を震わせ、吐息がより乱れている。
「キイチ……」涙で潤んだ瞳がキイチを無自覚に誘惑する。
キイチの腰もビクビクと痺れ、限界が近いのがわかった。
ゆっくり真柴の中にキイチが入ってくる──
「あっ……あ──」
真柴がその形を味わうようにキイチに吸い付いてくるが、キイチは構わず一気に奥まで貫いた。
「ああ──っ!!」
全身を電気が走ったみたいに激しい衝撃と痺れが真柴を襲った。
あとはもう激しく揺さぶられ真柴は顔を退けぞらせて顔の横にあるシーツを掴んでそれに耐えた。
一気に中まで貫いたと思ったらギリギリまで抜かれてそして再び奥へと穿つ。
気が狂いそうになりながら真柴は何度も鳴いては達した。
「助けてっ……もっ、無理っ、あっ、ああっ」
「嘘つけっ、アンタのここ無茶苦茶吸いついてきてんだけど? 好きなんだろ俺のっ」
わざと真柴の感じる部分を擦りつけてキイチは悪い笑みを浮かべている。
「ああ──ッ! あっあっ、んっ……あっ、すき……すきっ、キイチの気持ちっ……あっ……」
最早真柴に人間としての理性など残ってはいなかった──。Ωとしての本能と欲望だけがそこに形としてあるだけで乱暴に自分を貪るαに服従しては何度も身体を開いてみせる。
キイチに貫かれるたびに襲ってくる快感にただ溺れて自制できない声を上げた。
抽送を繰り返すキイチの雄が痙攣し、形を変えて真柴の中で止まる。
「あっ、ダメ……ッ」
一瞬恐怖を覚えた真柴が身体を後ろにひいてもそれはピッタリと繋がっていて離れることはなかった。
細い腰を掴まれ深く口付けられる。抵抗するための両手はキイチの肩に深く食い込むだけでその目的を果たすことは出来なかった。
キイチが小さく唸り真柴の中に熱い欲望が全て注ぎ込まれる。それすら真柴は感じてしまって、腰をビクビクと何度も痙攣させた。
最後の最後まで繋がった場所を強く締め付けて真柴は震えて達した。
死んだように眠る真柴が本当に死んでいるんじゃないかとキイチは不安になって顔を覗き込むが小さく寝息が溢れていて安堵した。
Ω特有の華奢な身体をした真柴の全身にはキイチがつけて回った跡が痛々しく残り、流石のキイチも申し訳ない気持ちになる。
初めて会った時はもっと鬱蒼としていた髪も今は綺麗に散髪されて前よりかは多少垢抜けていた。
「それでもこんなぱっとしないΩいます? こんなαに媚びない奴初めて会ったわ」
Ω全員がαに媚びて生きてるわけでもないが、無意識にそれはαと対峙した時に少なからずとも現れる。それが真柴には一切感じられなかったのだ。
「アンタは一生一人で生きてこうと決めてるΩだったんだろうな。プライドだけは無駄に高そうだったし──」
──そーいうの、辛くねぇの?
キイチは真柴の額にかかる髪をすきながらその寝顔に問いかけた。
「────痛い……、裂けた、絶対……」
起きあがろうとして途中で岩のように固まった真柴が唸る。
「見てやるよ、ホレ」とキイチが布団をめくろうとするのを断固拒絶する。
「アホかっ! お前って本当にデリカシーのないガキだな!」
「はい、ありませんよぉ〜、デリカシーもプライドも僕にはごさいませーん。そんなもん何の役にたつの」
言葉の端々に棘を感じながら真柴はギロリとキイチを泣いて腫らした目で睨んだ。当の本人はニンマリ笑ったままだ。
「お前いつもこんなセックスしてんのか? Ωのことなんて無視してこんな、無茶苦茶なの……」
「知らないよ。それにアンタが勝手にヒートになったんだろ、それって俺だけのせいなの?」
「それはお前がラットになって俺を」
「俺を──? ヒートを制御出来ないのはアンタの責任じゃないの?」
バシンとキイチの頬から乾いた音が響いた。
「痛 って……。自分の意見が通らない時は暴力ですか。αがΩを殴ればDVだって喚かれて、逆なら世間的常識だとでも思ってんの?」
真柴はキイチの正論に一瞬言葉を失い唇を噛んだ。
「だから……って、何回も中に出すとかありえない……」
「──それはごめん。なんかあん時はまともな判断がつかなくなってた」
バツが悪そうに話すキイチを不思議そうな顔で見ている真柴に「なんだよ」とキイチが怪訝な顔をした。
「お前の辞書に謝罪なんてあったんだな」
「まじアンタ失礼だな!!」
キイチに手伝って貰ってバスルームまでなんとか辿り着くが、一人になりたいのに自分も入ると言ってきかない子供に負けて中に入れたのが失敗だった。
お互い正面を向き合って壁に真柴を凭れさせ、左足を持ち上げてキイチは脇でそれを挟んだ。
真柴の中を洗うふりをしてキイチは奥まで指を沈めてその中を何度も掻き混ぜた。
「んっ、ん……バカ、やめ……」
「まだ柔らかいね、アンタの──」
転ばないように真柴はキイチの肩にしがみつくのが 精一杯で与えられる刺激に逆らうことは出来ない。
「いっ、挿れるの禁止ッ、許さないからッ……」
「え? ごめん、聞こえない──」
柔らかくなった場所に簡単にキイチは入り込んだ。バスルームに真柴の声が反響する。
奥深く貫かれて真柴は腰の力が抜けてしまい壁を滑り落ちそうになるのをキイチが抱きとめる。
そのまま尻を抱え上げられてほぼ全体重をキイチが支え、落ちないように必死に真柴は両手両足をキイチの身体に絡めた。
下から激しく突き上げられて洗ったばかりの場所がぐちゃぐちゃと音を立ててるのが真柴の耳に届いて恥ずかしくて堪らない。
なのに中で嬉しそうに膨らむキイチにたまらなく快感を覚えてしまう。それが更にキイチを刺激して余計に真柴は自分自身を追い込んだ。
散々振り回されて何度も何度もイかされて、ヘトヘトになって二人でバスルームの床にへたり込むとキイチはそれでも真柴の身体を離さなかった。
すぐにその理由を真柴は身体の中で理解した。
「! ──お前……性懲りも無くまた……」
「──すみませんでした……」
キイチは黙って左の頬を差し出した──。
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