5 / 23
ep.4
「も……っ、なんでこうなんのっ?」
半泣きになった真柴の身体を簡単にキイチはひっくり返して後ろから強く抱きしめる。
耳朶を甘噛みしてゆっくりと首筋から背骨へと舌を這わせて突き出させた小さな尻へとそのまま降りてゆく。
キイチに怖いものはないのか、平気で真柴のまだ少し腫れたままの後ろに舌を這わして執拗に愛撫し、わざといやらしく音を立てる。
「変態っ、そんなとこ舐めんなっ……んっ、んんっ」
「……いいじゃん、俺真柴のここ好きだよ、狭くて熱くて中がうねうねして、エロいの──」
指で思いっきり広げられて真柴は短く悲鳴を上げた。
「──ヤバイ、も、俺挿れたい……」
「なっ、生はダメっ……キイチっ!」
キイチの目は酒に酔ったみたいに虚ろで、最早真柴の声など届いていない──。
「キイチっ……」
キイチにしっかり抑えられた腰はびくともしなくて粘膜にキイチの雄が吸い付くと後は簡単に中へと入ってきた──。
「あっ、ダメ、キイチっ……だめってばっ」
「真柴の中っ……気持ち……っ、ね……? 動いていい?」
──そんな甘えた声出したって許さないんだからなと真柴は心の中で叫ぶが。ろくに話すことも逆らうこともできない。一気に深いところまで進まれて真柴は一瞬喉が詰まった。
お腹の中に圧迫感が伝わって、真柴は無自覚に繋がった場所を締め付ける。そのせいでキイチが苦しそうに背中で喘いだ。
「ね……真柴、このまま、中だけ動かして俺のことイかせてよ」
「もっ、そーいう高度なリクエストばっかすんなっ……」
「──ごめんちょっとテンション上がりすぎた」
謝ったのも束の間、キイチは激しく後ろから何度も真柴を突き上げ、逃げようとする真柴の両手首を後ろから掴んで更にその奥を執拗に穿つ。
「あっく……っ」
ビリビリと真柴の奥に電気が走る。
──ダメ、と思ったのに理性を失った真柴は全身を震わせてキイチの雄をより一層咥え込んだ。
突然咥え込んだ場所が真柴とは別の生き物のように畝り、その刺激に持っていかれそうになったキイチは思わず喉から変な声を上げた。
「──真柴?」
「あっ、あっ……ああっ……」
真柴の真っ赤な肩がうっすらかいた汗で妖艶に光りながら荒い呼吸と共に揺れている──。
ゆっくり振り返った真柴の濡れた瞳は完全に雌のそれだった──。
「キイチ……」
悪魔の囁き声にキイチは簡単に誘われた。
真柴の口の中を蹂躙し、そこから流れる真柴の雫すらうまそうに舐めとる。
形を変えたキイチの雄が深いところまで真柴を貫いては何度も中を犯して回る。キイチの先走りなのか真柴の中から溢れているものなか区別のつかない透明の蜜がいやらしく真柴の太ももを濡らしていく。
二人にしかわからない濃厚な香りが身体の周りに充満して、二人はどんどんその香りに酔っていく──。
繋がった場所をそのままに、キイチは真柴を正面から抱きしめると真柴はそれだけで泣いていた──。
キイチの次第に早くなる抽送に応えるように真柴も腰を揺らし甘い吐息と共に快感に溺れた──。一番深いところに行きたくてキイチは自分の腹をぴたりと真柴の白い肌にくっつけると真柴は今まで一番大きな悲鳴をあげ中に流れる熱と共に最後を迎えた──。
カーテンの向こうには太陽が登っている──それだけは隙間から覗く光で理解していた──。
「──真柴、上手……」
なのに暗がりのベッドの上で濃い匂いの雄を口いっぱいに咥えさせられて真柴は何度も顔を揺らした。
どうすればキイチが気持ちよくなるのかなんて考える余裕もない──ただ無性にそれが欲しくて仕方なくなる。
舌で先をいじると涎を垂らすみたいにキイチのが溢れてくる──それを必死に真柴は舐めとった。
「──顎……いたい……」
涙目の真柴がもう限界なのか飲み損ねた残滓を唇に垂らしている。
「頑張ったね、俺も早く真柴の中で全部出したいな──」
「……うん……」
今の真柴にあるのは獣のような快感を求める欲望だけだった──。
もう頭では何も考えられないのだ──。
只々キイチの全てを自分の中で喰らいたい──自分の中でこの男を気持ちよくさせて、その全てを自分に注ぎ込んで欲しい──。
それしか頭になかった──。
真柴はシーツに背中をつき、細い指で自らの足を持ち上げて開き、キイチによく見えるように腰を上げた。もう何度もキイチに出されたものでその周りは濡れていて、それでもまたキイチに見られただけで戦慄いては愛液を垂らしている──。
ゆっくりとキイチが入ってくる──。
先の窪んだ部分まで進むと後は楽に中へと滑り込む。その形を愛おしそうに真柴が吸い付いて飲み込んでゆく──。
どちらからともなく口付けて何度も何度も深く中を味わった。
キイチは同じように自身の雄で真柴の中を味わい、真柴の好きな場所を何度も擦ってやる。その度に真柴は嬉しそうに鳴いた。
真柴が気を失うまでキイチは何度もケダモノのそれで真柴の身体を貪った──。
頭が重い──
今日は何曜日の何時なのか……。
動かない頭でぼんやりと真柴は考えた。
下半身がジンジンして、ちゃんと機能していない気もする──。
「腹……減ったぁ……」
隣で眠るキイチが枕に顔を埋めて唸り声を上げている。
「俺も──。置配 頼もうか……」
痛みであまり身体を動かせない真柴は首から上だけをキイチに向けてその顔を眺めた。枕から少しだけ顔をずらして眉を下げたキイチもこちらを見ている。
「──身体無事?」
「無事に見える?」
「──ごめんなさい」
「許さない」
諦めたように真柴は肩で息をつき天井を眺めた。
──こんなΩになりたくなかったのに……。
キイチは上半身裸で風呂上がりの濡れた髪のまま、ものすごい勢いで大盛の豚丼を食べている。間に挟むサラダがチキン入りのシーザーサラダなので見ているだけで真柴は胸焼けしそうになった。真柴はサラダうどんを頼んだものの、半分くらいのところで気が済んでしまい、今は家にあった栄養ドリンクをチビチビ飲んでいた。
「後で俺コンビニ行ってくるよ」
ご飯粒を口の横につけながらキイチが告げた。
「えっ、まだ食べ足りないの?」
「違くて、真柴の食べれそうなもの買ってくる。ゼリーとかそういうのが楽でしょ?」
──こーいうところが本当に頭に来るんだよなぁ……。と真柴は心の中で独りごちた。
あっという間に完食したキイチはすぐさまコンビニへと走り、真柴のためにフルーツゼリーやレンジで食べられる野菜スープなどを色々見繕って戻ってきた。あまりに出来たラインナップを眺めて真柴はジトリとした目でキイチを見つめ「本当……腹の立つガキ」と一蹴した。
「こらー! そこは素直にありがとうでしょがー!」
真柴はありがとうの代わりに柔らかく微笑んでみせ、キイチはそれだけ満足そうだ──。
結局キイチは日曜の夕方まで真柴の家に入り浸った。日曜はさすがに無茶はして来なかったが、それでも恋人同士にでもなったみたいに真柴の身体に寄り添いずっとそばにいた。
──俺たちはたまたまお互いがαとΩだった。
ただそれだけの理由で身体を重ねたんだ──。
それ以上でも以下でもない──。
「このままじゃ俺はダメになる……俺がキイチと番になれるわけないのに──」
若い雄が欲しかったのは性欲を吐き出せるΩ の身体であって、それは俺でなくてもよかったはずだ──。その証拠にどんなに理性を失ってもキイチは俺を噛まなかった──俺には抵抗する余裕すらなかったのに……。
最後にしよう──
でないと俺は俺を見失う──。
ともだちにシェアしよう!