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第5話 懇願
「……ッ」
「う…ぐぅっ……くく」
「……全部入ってるし、ココもいじられてるし、問題なく勃っちゃってるのに、まだ泣いてんだ?」
正夜は俺の首下で囁きながら腰を動かし、手で俺自身を苛み続けている。
「ホラ、気持ちいーねー、ココいじられると我慢できなくなっちゃうねー」
コロコロと指先をちんこの周りで動かす。くねるような手つきで。
俺の息は相当に乱れ、肺も腹部も上下している。
「…………ハはァッ」
「ハイハイ、一回出しちゃおう、……うるさいのはイヤだ」
男は自分の発言に合わせ手の動きを、射精へ導くように巧みに波打たせた。
「ァッ………うっ…………!!」
ドロとした液体が、俺の足下にかかった。
自分のものだ。
「イッたおかげで、大分アナルがゆるゆるになったみたいだ」
俺が出したなり、正夜が激しく動かしてきた。
「うう!!……動かすの、やめ……やめろよ……正夜…………」
正夜はニヤリと笑うばかりで腰を動かし続けた。
俺には何も発言権は与えようとせず、聞き届けられず、女にされるように体を掴まれて腰と腰とが合わさり打たれる。
「……こないだので分かってると思うけど、僕は一回や二回じゃ済まないからな」
ゾッとする一言を、折り重なられながら酷薄な声色を使い伝えてくる。
中で何かが引っかかられた。
車輪が擦れて白い火が小さく飛んだように、じわとした快感が湧き出す部分が刺激を受けた。
こないだと同じだ。
こないだと同じように、快感が走る部分をまた繰り返し、同じように突こうとしている。連動して自分でも聞きたくないような変な声が出る。
「………ふあ………ぅ……ン!」
正夜の目が俺の声が変わった途端、細まった。
倉庫の中はビリビリと、声同士が本当によく響く。本当に外には漏れてないのだろうか。
打ちつける破裂音に、俺を責める男の声と、自分の泣き漏らす声とが全部混ざりあって倉庫中をこんなにもひしめいているのに。
首をのけぞらせ、何度も何度も呻き、息を肺を握り掴まれるように思い切り吐いた。
何回も何回も気持ちよさを感じさせられるように突かれた。
気付けば、白い俺の体液が、驚愕するほどの長い時間を震えながら出続けていた。
射精の開放感に自然と息がその時だけ安らぐ。
「はい、いっぱい出ましたねー、気持ち良かったねー、よしよし」
出ているのにまだ中から抉るように腰を打ってくる。
出ている余韻にも浸らせてくれずに。
「そろそろ、僕も、出しちゃおうかな……」
一言と同時に正夜の声の余裕が薄れ消え去った。
電車の連結部の上にいるように急に激しく揺らされ、下から衝撃を加えられる。
ガクガクと足腰がすくまるだろうほどに俺は正夜の下半身に叩かれ、中に何か飛沫が熱くかかる感触を味合わされられた。
「何でだ……何でだ……何でだ……」
そんなのが朝まで続くと、俺はブツブツうわ言のように繰り返し呟いていた。
精液の色も段々と透明に変わり、スッカリ俺はもう出したくても空になって何も出なくなる程になっていた。
「朔、気持ちいーんだから、いーじゃない」
俺をなだめるように貫きながら正夜が指の背を俺の頬に当ててきた。
貫かれている部位の感覚は完全に麻痺し、もう痛みは何もなく、鈍い苦しさと生々しい快感だけが残された。
高い位置にある窓から白んだ光が差し込み始め、一日の開始を告げる時刻へと様変わるが、俺の状態は、昨日ここを訪れてすぐの状態から、微塵も変わっていない。
「もうやだ……もうやだ……っ……もうやだ………」
震えながら懇願すると、仕方ないなぁとでもいうような表情をして、正夜が俺の唇に自分の唇を押し付けてきた。
「んんッ」
そのままレロ……と舌を舌が舐め上げて、喉の奥まで突き込まれ、また戻る。
一瞬口が離されると
「朔も舌を動かして、絡ませてみてよ」
言うなりもう一度吸いつかれ合わさられた。
何でそんなことしなくちゃいけないんだ。
でも正夜の腰の動きが止まったのは助かった。もう休みたい、休みたいんだ。
キスだけしてるから休ませてくれ……。
そう思って言うがままに俺からも舌を動かしたら、気を良くしたように唇を端から端まで舌先でなぞられた。
もう気絶した。
◇◇◼️◇◇
気を失いベッドに倒れる朔の正気の薄れた顔を横目に見ながら、頭を掻いて正夜はバスルームに入る。
欲情の波は、朔が昏倒すると共に白け白み、体の下奥まで引っ込んだようだ。
排水がそのまま流せる粗い濃いグレイの石作りの場所に、ポータブルの給油機付きのシャワーと洋風の置き型バスタブを置いてある。
温度調整の効かない温水が出る蛇口から、浴槽にお湯を出して使った水は底から抜けばいいだけのバスタブだ。
この倉庫はそんな感じで、充分に暮らせるよう手に入れた時から、正夜があちこちに手を入れていた。遮音や断熱や……もちろん効能としては充分とは言えないが、倉庫だから暮らし憎いとは言い難いほどには快適かもしれなかった。
正夜はバスルームから、ベッドの置いてあるメインの部屋に戻ると、高窓に設置されてあるオペレーターからのぞいているクサリを手に持ち、窓を開閉させ外の空気を内側に入れ込んだ。
替えるのは後でいいか、と散々濡れて汚れたシーツにはとりあえずバスタオルを何枚かだけ敷いて、白一色の上布団だけ持ってきて裸の朔の側に潜り込んでそのまま寝てしまった。
「僕だって疲れているんだ。一晩ヤリ通せば……」
誰に聞かせるでもなく一人呟きながら。
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