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第9話 正夜の独り言

◇◇◼️◇◇ 初冬の季節だ。 グシャグシャの嗄れ声が鼻を啜るような水気を帯びて、(みだ)らを四方の中に篭らせた湿りの喘ぎとなったものが、僕の耳とこの倉庫内をこそばゆく擽っていた。 外は強風が吹き荒れていた。寒気を帯びる冷たい木枯らしだった。 そんな中、慣れた居所に帰ってみると 僕のベッドの上に、発情しきった淫売のポルノ女優が、身をくねらせて横たわっているのかと、一瞬黙り込んでしまった。 よく見るとそれは単なる錯覚で、目の前に居たのは女ではなく、自分がそのような状態にして去ったままの朔だった。 朔の顔は眉を曇らせ宙を見ながら紅潮して、僕を通り越したどこかを透かして見ているようである。 もしかしたら僕の後ろに天国でも既に見えてるのだろうか。 無言のままリモコンを取り、部屋の温度を上げた。 朔が後ろから声にならないような声を僕の背中に投げかけている。 そういえば朝から水を飲ましていないので、脱水症状になろうとおかしくないな。 本当は僕も、朔の姿を朔だと確認できた時点で、下半身に潜むペニスが昂りを疼き出し、熱が集まる高揚を生んでいた。 一直線に股関節の狭間のディルドに震えるこの朔の身体にのしかかり、一気に差し込みたい欲求にも駆られたが、それは色々な理由からやめにしとこうと捨て去り、水を飲ませ、朔の体にシャワーを浴びせるよう次の行動を厳かに変更した。 わざと口から溢れ出すような手つきで、彼の口元に押し付けコップから水を飲ませてあげると、水が諸肌をいやらしく滴りながら、彼は舌を動かし子犬のように力無く飲んでいた。朔の腕にかけられた銀の拘束をゆっくり解き放った。 朔の身体を後ろ向きにさせ、シャワーとボディソープを交互に用い、くまなく洗いながら、同時に性感帯を愛撫する。 洗われているつもりでいるから臀部や胸先を触ると、触る度に、ハッとした顔になる朔の表情が面白い。 そのまま指先で尻のT字をなぞり、先程までペニスの模造品を嵌め込んで見事に空けられた穿孔へ、指を伸ばしてほじくってあげながら、身体を洗っていく。 見ると、朔は目を瞑り、歯を食いしばるようにして、顔を赤くしながら、指先の悪戯を忍んでいる。 朔のアナルはもうすっかり柔らかく、何かを差し込めば、肉壁が更に深く入れて貰おうと導いてくれ、簡単に閉じようとはしなくなっていた。 何度か内側を洗浄してあげ、最後に手のひらに泡を思い切りつけて、朔のアナルに五指全てを滑り込ませねじ込むと、彼は軽く悲鳴を小さくだが僕の手から逃げるようにあげた。 勿論切れてはいない。 いきなり一本指と違う大きいものが入り込んできたので、朔の身体が慌ててのけぞっただけだ。 自分のペニスの外周にも泡を擦りつけて朔を壁につかせると、立たせた彼は一回振り向き、背後に僕の昂るペニスを目撃した朔の表情は、もう何をされるのかの理解と諦めと納得があった。 朔の恭順を礼賛しつつ、無理に牡オス の受け入れ口にされた部分に昂りをあてがい、一槍のように途中で止まらずに思い切り貫き、一気に奥まで到達しては腰を引き戻した。 「ァアア……!ん…うゥっ!!んん…うゥっ!!!」 下を向きながら歪む朔の顔が、動く度にひきつれ、首が下がる。 天井まで伸びる排水管へ捕まりながら、両腰を掴む僕から強要される無体に耐えている。 「あぃっ…」 動かす度に目の前の肩甲骨がガチガチと揺れる。 「ハァーッ!!ァア、アゥ!!!アふっ……あ…ア!………」 大丈夫だ、彼の声には間違いなく、気持ち良さが混ざっている……。 朔の足の間にくいこんだ彼にとっての凶器は、間違いなく怯える朔自身を何よりも歓喜させ悦ばせているのだ。 モヤの立つ浴室の中で、ねじり、うねり、突き動かし、打ちつける。 朔の心臓の動きよりも遥かにエキセントリックな、不規則な動き方を味合わせる。 しばらくペニスを動かして遊んでいると、朔がそれまでの激しい息遣いとは打って変わって「フゥー………っ、フゥーっ………」 と肩を上下させ身を鎮めるような息遣いに変わった。 下を見ると、白いものが、床にパタパタと滴っていた。 ◇◇◼️◇◇ ベッドで、男二人もつれていると、さっきまで部屋中を照らしていた月光が闇に飲まれて、あたりが急にフタで覆われたように暗くなった。 面倒がって間接照明をつけずに、唯一のライトとしていた頼りの月明かりが奪い去られた。 月さえもこんな僕達男同士の汚れた交わりは目にできないというのか。 いいや、月が目を背けたいのはこの僕か。 ───僕は今、目を覆いたくなる程、誰かを踏み躙り、絞り潰すような、非道く悪いことをしているか? ───でも、これが初めてじゃない。毎度のことだろう。 ───いつだって高い頭上から、そんな僕の姿を見渡している癖に。 ───空から自適に御覧になられている癖に。 クスッと笑いが溢れた。 ◇◇◼️◇◇ 窓の外が薄紫になってきた。紫紺に自分を纏わせた小狡い日の光が、夜を追いやろうとしているのだ。 朔は……随分素直に僕へ快感を表現するようになってきた。 何回も朔の中に吐いて目的を達しては、何回も入れ直し欲望行為を仕切り直し始める毎に、脚が僕の腰を捕まえ、招いては離さないようになって来たので、いっそ腕の束縛を頃合いだとほどいてやる。 気持ちいい部分をつかれ、前後される度に、僕の脇や背中、うなじあたりを手がぎゅっと掴み、そこがいいと教えた。 一瞬、それまでで一番耽った弛緩しきりの表情が朔の顔に浮かんだと思ったら、次の瞬間には僕のことを睨視していた。 僕はこの睨視者の奇っ怪なる表情転換を観察しながら睨む目の上にある髪に手をやり「ねえ、中にまた出していい?」と聞いた。 朔は面白いぐらいにまた表情が180度変わり、ビクッと泣きそうな恐れる表情に変わった後、YESの動作に顔を何回も振った。 朔の意識が遠のいた後、ようやく自身の分身を、朔の中から粘液の音とともに引っこ抜いた。 ウェットティッシュで軽く互いを拭い、ゴミ箱に放り捨てて、昨日のようにバスタオルだけ朔と自分の身体の下に敷き詰め、布団をかけ、五体をごろんと伸ばした。 もう横に眠る人間の腕は縛らないで、僕自身も性交後の心地好いだるさと安らぎの中に身を投じた。 今日はとても気持ちよかったからね。 このまま朔がどこかに逃げていってしまっても今日は全然構わないと思った。 今日は最高に気持ち良かったからさ。

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