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寝息を頂く幸福②

「寝てるの?」  本を読んでいる向原の肩に頭を預けるようにして、幼馴染みは眠っているようだった。 「ちょっと前からな。起こすなよ」 「うん」  重たくないのかなぁ、というか、邪魔じゃないのかなぁ、と思ったものの、その声があまりにも優しかったので、余計な言葉は呑み込むことにした。  あいつらの言動は必要以上に深く考えないほうがいいと忠告してくれたのは篠原だったが、なんとなくわかる気がする。たぶんこういうことだ。  物珍しさからじっと見つめていると、目を伏せたまま向原が言った。 「おまえはいいのか、起きてて」  怒られるぞ、と諭すように繰り返されて、だって、と訴える。 「祥くん、母さんみたいなことばっかり言うんだよ」  たしかに遊びに来てるは来てるけど、羽目は外しすぎるな、とか。つまるところ、もう寝る時間、とか。そういうこと。 「そりゃ責任があるからな」 「責任?」 「大事な息子さんを預かってますっていう責任」 「……」 「こいつが考えそうなことだろ」 「そうだけど」  そうだけど、でも、と口の中でだけもごもごと呟く。ふっと笑われてしまって、皓太は唇を尖らせた。

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