30 / 38

クリスマス番外編③

「懐かしいな、覚えてるよ」  食堂に戻るなり訴えた皓太に、ツリーのオーナメントを数えていた幼馴染みが、あぁ、と懐かしそうに笑った。  中心に設置された大きなツリーの周りで騒いでいる三年生たちを一瞥してから、「言わないでよ、そういう話」と小声で念を押す。 「絶対に。特に、榛名とかには」  卒業が目前に迫ってきて寂しいのか、榛名は日に日に成瀬のそばにいることが増えているし、成瀬は成瀬で他人の機微に人一倍聡いくせに妙なところで鈍いところがある。  こちらの気も知らず――あるいは知っていても、「恥ずかしいことじゃないし、かわいいだろ」くらいのていで言いかねない。そういう人なのだ。だから皓太は本気だと伝わるように言い募った。 「本当、絶対に。頼むから」 「なんで? かわいいのに。俺、ぜんぜん信じてなかったからさ。ほほえましいなって思ってたよ」 「信じてないって」 「だって、そういうのって、親がどうしたいかによるだろ。うちの親、クリスマスとかパーティーばっかりだったしなぁ。プレゼントは貰ってたと思うけど、サンタからっていうていじゃなくて、『私からよ』って感じだったから。サンタっていう概念がなかった」 「……あぁ」  なるほど、と納得してしまって、皓太は頷いた。やりそう。璃子さんまちがいなくそう言いそう。なんでプレゼントを用意した私の労力をサンタに無償譲渡しないといけないのよ、くらいのことは言いそう。

ともだちにシェアしよう!