33 / 38

クリスマス番外編⑥

「それでも、ちゃんと付き合ってあげてたんじゃん。えらい、えらい」 「おまえがさっさと消えたからな」 「人聞きの悪い。ちゃんとこっちで作業してたよ。なぁ、皓太」 「え、……あぁ、うん」  まぁ、逃げたいが秋で、作業を見つけたが後だろうけどな、とは思ったが、長いものに巻かれることを皓太は選んだ。向原が本気で成瀬を責めることはないと知っていたので。ただのじゃれ合いみたいなものだ。  案の定、向原はしかたなさそうに笑っただけだった。  ――これも、もうすぐ見れなくなるんだなぁ。  成瀬と向原のやりとりも、寮を明るくする篠原や茅野の声も。そう思うと、やはり少し寂しい。 「そういえば、向原、サンタっていつまで信じてた?」 「ちょ……」  その話しないでって言ったでしょ、と言うよりも、向原が答えるほうが早かった。 「信じてた記憶がない。概念がなかった」 「それ、俺と一緒」  概念がないと信じる信じない以前の問題だよなぁ、と幼馴染みは他意のなさそうな顔で笑っている。  ……まぁ、いいか。  どうにか皓太は割り切った。榛名ならともかく向原さんが馬鹿にすることはないだろうし。そもそもとして俺に話を振られなければいい話だし。

ともだちにシェアしよう!