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クリスマス番外編⑥
「それでも、ちゃんと付き合ってあげてたんじゃん。えらい、えらい」
「おまえがさっさと消えたからな」
「人聞きの悪い。ちゃんとこっちで作業してたよ。なぁ、皓太」
「え、……あぁ、うん」
まぁ、逃げたいが秋で、作業を見つけたが後だろうけどな、とは思ったが、長いものに巻かれることを皓太は選んだ。向原が本気で成瀬を責めることはないと知っていたので。ただのじゃれ合いみたいなものだ。
案の定、向原はしかたなさそうに笑っただけだった。
――これも、もうすぐ見れなくなるんだなぁ。
成瀬と向原のやりとりも、寮を明るくする篠原や茅野の声も。そう思うと、やはり少し寂しい。
「そういえば、向原、サンタっていつまで信じてた?」
「ちょ……」
その話しないでって言ったでしょ、と言うよりも、向原が答えるほうが早かった。
「信じてた記憶がない。概念がなかった」
「それ、俺と一緒」
概念がないと信じる信じない以前の問題だよなぁ、と幼馴染みは他意のなさそうな顔で笑っている。
……まぁ、いいか。
どうにか皓太は割り切った。榛名ならともかく向原さんが馬鹿にすることはないだろうし。そもそもとして俺に話を振られなければいい話だし。
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