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第3話 強奪
「藤、俺ら帰るけどお前らどうすんの⁇」
鞄を持った青葉に声を掛けられた瞬間、ミハイルが顔の前で両手を合わせ俺を見てきた為、小さく溜息を吐いた
「あー…もう少し見てくわ」
俺がそう返事をすると、パッとミハイルの表情が明るくなる
こういう時のコイツには 耳と尻尾が見える気がしてならない
「ほら…このコードもう一回弾いてみろよ」
「はーい♪」
ぎこちないながらも何とか弾ききると、褒めて欲しいと言わんばかりの表情をしている
無駄に整った顔してるくせに、なんだか小さい子供みたいで思わずプッと吹き出してしまう
「何で笑うんですか!?」
「悪い悪い
まっ、始めて2週間にしちゃ上出来じゃん」
アイドルの様な髪をぐしゃぐしゃと撫でると、ミハイルは嬉しそうに笑った
「俺がこのバンドのスターになる日も近いですね」
「はいはい」
ミハイルは自信過剰ではあるけれど、αによくいる偉そう奴らとは少し違っていた
呆れてしまうような所もあるけど、何故か憎めなくて 人懐っこい奴だった
俺みたいな平凡な奴に、教えて教えてと来るαなんて見た事無い
バカでアホだけど 可愛い後輩
ミハイルの事を そんな風に認識し始めていた
だから放課後の部室に2人っきりという状況にも、俺は油断してしまっていたんだと思う
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