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第4話 強奪 Ⅱ

「そろそろ帰るぞ」 「はーい」 帰り支度を済ませ、開けていた窓を閉めようとミハイルに背中を向けた 「…あれ⁇」 そう呟いたミハイルの声は 窓を閉める音に掻き消されて俺には聞こえていなかった だから振り返ったら目の前にミハイルが居て、予想外の事に体がビクッとかなり大袈裟に跳ねた 「な!! 何だよ!?」 「…何か藤さん…甘い匂いがします」 ミハイルの言葉にドキッとしてしまった 大丈夫、まだ発情期は来ていない そう自分に言い聞かせても 動揺が隠し切れない 「はあ!? そんな匂いしねぇし!!」 声の震えが止まらなくて、早くミハイルを振り切りたかった俺は、後から思えばかなり乱暴に横を通り抜けようとしたと思う そのせいで無駄に長いミハイルの足に引っかかって体のバランスを崩してしまった 転ぶと思った俺は咄嗟に腕を庇いたくて、背中を床に向けるように体を捻った 「藤さん!! 危ない!!」

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