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第10話 弱味 Ⅱ〜side鷺沼〜
ああ…どうしよう…
こんな顔させたい訳じゃないのに…
目の前の藤さんは明らかに俺に怯えていて悲しくなる
どうしたら 青葉さんを見るみたく、俺の事を見てくれるんだろう…
でもどんなに考えたって、俺に正しい答えなんて出せるはずもなかった
「…だから このまま出して良い⁇って」
「え!? や…嫌だ!!」
藤さんの顔色がまた変わったのを見て、俺の中の何かがプツッと音を立てて切れたのが聞こえた
「俺も嫌です…
藤さん 俺の全部受け止めて下さい」
さらに激しく突き立てると、藤さんは頭を左右に振りながら泣き喚いている
「や!!…やめ!!…みは…」
嫌だ
嫌だ
「…おね…が…」
藤さんが もっと俺の事見て、頭の中 俺でいっぱいにしてくれなきゃ、絶対嫌だ
「ん… 出る…」
「…う…あ…ああ!!」
一番奥まで突き挿れながら、欲望の塊を藤さんの中に吐き出した
そのまま抜かずに余韻に浸っていると 藤さんが人形の様な目をしているのに気付いて、ズキッと胸の奥が針で刺された様に痛んだ
「…藤さん」
もう何の抵抗もしない藤さんにキスをすると、俺の頬が温かい物で濡れた
薄っすら目を開けると 藤さんは泣いていて、このままじゃ これで終わっちゃうって思った
そんなの 絶対嫌だ
「…ねぇ 藤さん」
俺の呼び掛けにも藤さんは 瞳一つ動かしてはくれなかった
「…この事 皆にバラされたくなかったら、また 俺の相手してくれますよね⁇」
この俺の台詞を聞いた藤さんは、信じられないと言いたげな顔を俺に向けた
それが良い感情では無い事は分かっていたけど、さっきまでの無の感情よりはずっと良いと思った
そう、別に良いんだ 今はこれで
だって 藤さんに触れられなくなっちゃったら、そっちの方が 頭可笑しくなっちゃうよ
だから俺は 最低だって藤さんに思われたって、何でも良いから側に居たいんだ
「…ね⁇ 藤さん」
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