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第15話 居残
「藤、調子悪いんならミハイルとの居残り変わるぞ⁇」
青葉に顔を覗き込まれて、汗を拭っていたタオルを 思わず口元に寄せた
「へ 平気…」
「でも 藤さん、確かにいつもと少し違うよね」
恵斗にまでそんな事を言われてどうしようかと考えていたら体が宙に浮く感じがして、振り返るとミハイルが不貞腐れた面をしていた
「俺は 藤さんとが良いです!!」
「分かったから 降ろせよ…」
後ろにいるミハイルに蹴りを入れようとして 腰が悲鳴を上げ、結局何も出来ずにされるがままになってしまう
「やっぱり藤さん、今日変…」
恵斗が俺の事をジーっと見ていてギクッと心臓が跳ねた
「いつもなら とっくにミハイルの事蹴り飛ばしてるのに」
「俺に優しくなったんですよね⁇」
ホクホクと顔を赤らめるミハイルをキッと睨みつけた
それと同時に前から視線を感じ、ハッとなって二人の方に振り返ると 訝しげに俺達を見ていて思わず口籠ってしまった
「だ 大丈夫…
コイツのギター見るくらい 何ともないから」
「…そうか⁇」
「あんまり 無理しないで…」
「うん… サンキュ…」
二人並んで出て行く後ろ姿
何回見ても 胸の奥がキュッとなる
恵斗の事だって 可愛い後輩だと思ってるのに俺って本当心が狭い…
「ふ〜じさん」
少し不機嫌そうな声音のミハイルを恐る恐る振り返ると ニッと笑顔を向けられた
でも瞳の奥が笑ってなくてゾワリと背筋に悪寒が走る
「居残り、よろしくお願いしゃーす」
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