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第29話 宿泊X

部屋に戻ると 暗闇の中で ミハイルの金髪が、キラキラと輝いて見えた その寝顔は絵本に出て来そうな程綺麗で、無意識に手を伸ばすと 急に手首をガシッと掴まれ、ビックリした俺は 少し後ずさってしまった 「…んん…ふ…じ…さん⁇」 ミハイルはモゾモゾと動くと寝惚け眼で 俺をジーッと見つめている 「…藤さん⁇」 「な、何だよ…」 ミハイルはいきなり俺の両手首を掴むと腕を高く持ち上げてきた おかげで俺は バンザイをしている様な姿になり、カーッと顔の温度が上がるのを感じた 「何だよ!? 離せよ!!」 「…藤さん 何で俺の服着てるんですか⁇」 ミハイルの嬉しそうな声に自分の恰好を思い出して恥ずかしくなった俺は 動かせる足で何とか隠そうと身を捩るも、ミハイルは片手で俺の両手を掴み、もう片方の手を俺の太腿に這わせてきた 「ひゃ!?」 「しかも…下 何も履いてないとか…誘ってるんですか…⁇」 ミハイルは裾を捲り上げながら、ススッと上に手を滑らせてきて、俺は力を振り絞ってミハイルを蹴り上げた 「痛!! 今 思いっきり顔面でしたよ!?」 「知るか!! 離せよ!!」 「嫌です!!」 一瞬睨み合いになるも、気力も体力も失われていた俺は早々に勝負を放棄し、俯きながらボソリと呟いた 「…お前…俺の事 どうしたいんだよ⁇」 「え⁇」 「お前なら こういう事する相手…いくらでも いんだろ⁇」 俺がΩだと知ったのは 後からだった筈だ もし 本当に俺がβだったら、今日とかどうなってたんだろう…って思う 「…お前は…別に…初めてって訳でもないだろうし…」 「え!? 藤さんって俺が初めてなんですか!?」 自分がとんでもないカミングアウトをしてしまった事に気付き、慌てて訂正しようと顔をミハイルの方に向けて、俺は言葉を失ってしまった 「…な」 何で そんな嬉しそうな顔してんの…⁇ あまりにも綺麗なその笑顔を直視出来なくて、俺はまた床に視線を落とした 「ていうか、俺 言ってませんでしたっけ⁇」 「…何を⁇」 またあのキラキラが来るんじゃないかと思った俺は 恐る恐るミハイルを見上げた 「俺、藤さんの事 好きなんですけど…」 さも当たり前みたいにミハイルが言うから一瞬 理解出来なかったけど、その後はミハイルの言葉が頭の中で反響して、そのせいで耳まで熱くなっているのが自分でも分かった 「…そ…な…と…取り敢えず…手 離せよ」 今だに俺はミハイルに拘束されたままで、微妙に身じろいでそう告げると 俺の腕が下ろされた ホッとしたのも束の間、今度は グイッと引かれて、ミハイルの胸の中にスッポリと収まってしまった 「な!! 何だ…よ…」 顔を上げた俺は また言葉に詰まってしまった ミハイルが愛しそうに目を細めて 俺を見ていたから 「すみません  俺 いつも心の中で叫んでたんで伝えてるつもりでいました」 「…え⁇」 ミハイルが小さく息を吐いたかと思うと、俺を抱き締める腕に ギュッと力が入るのが分かった 「藤さん 好きです 大好きです  俺と…番になって下さい」 ミハイルの言葉を 俺はきっとポカンとした顔で聞いていた 「…藤さん⁇」 ミハイルに顔を覗き込まれて ハッとなった 「そ、そんなの…急に言われても…」 全てを見透かされる様な緑色の瞳から逃げたくて、俺は目の前にあるミハイルの胸に顔を埋めた そこは 俺と同じか それ以上に心臓がドキドキと煩くて、コッチまでそのスピードが速まっていく様な気がした

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