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第11話
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目を覚ますと、隣に侑生は居なかった。
アレ?と思いつつ体を起こす。汚れを拭いてくれたみたいで、体はスッキリしていた。
下着も服も着せてくれている侑生に感謝して、ベッドから降りる。寝室を出るとすぐのリビングで、侑生は難しい顔をしながらパソコンを眺めていた。
「……侑生」
声をかけていいのか悩んで、小さな声で名前を呼ぶと、勢いよく俺を見た侑生に驚いて飛び跳ねた。
「洸ちゃん、起きたんだね。」
「侑生、仕事中?俺、こっちにいた方がいい?」
「ううん。隣においで」
パソコンを閉じた侑生はそう言って腕を広げる。
迷うことなくその中に飛び込んで、胸に頬擦りすると彼は俺の頭を撫でた。
「洸ちゃん、ご飯、何食べたい?」
「えっと……うーん……」
「肉か魚なら?」
「……昨日ハンバーグだったから、魚?」
「じゃあ煮付けはどう?」
「最高」
甘い味付け、大好きなんだよな、と思いニマニマしていると顔中にキスが降ってきて思わず目を閉じた。
「何、何、どうした」
「洸ちゃん可愛い」
「ちょっ」
前から思っていたけれど、侑生は随分と犬みたいな気がする。
耳としっぽが生えてるんじゃないかと思う時が今までに何度もあった。
「はぁ、いい匂いするし……」
「……侑生ってさ、なんか……あ、いや、やめとく。さすがに怒る気がする」
「怒る?俺が?洸ちゃんに?……有り得ないよ」
「それは本当か」
「うん。俺が何?教えてほしいな」
にこにこ、笑顔な彼はやはり極道より犬だと思う。
「侑生って犬みたい。ワンワンって鳴いてみて」
「……」
「あ、怒った?」
「……ワンワン」
「んっ、ふはは、やっぱり犬みたい」
侑生の頭をワシャワシャと撫でると、侑生はニヤッと笑って俺の唇に噛み付いてきた。
「むっ!?」
「俺は犬じゃないよ」
「んーっ!侑生、怒らないって言ったじゃん!」
「怒ってないよ。犬って言われたから犬らしい行動してみただけだよ」
「ご主人様に噛み付いちゃダメでしょ」
「洸ちゃんは俺のご主人様なの?」
「違うけど」
「違うのか」
侑生は眉間に皺を寄せて、けれどそこを撫でるとすぐにいつもの優しい顔に戻った。
「俺、侑生の優しい顔が一番好き。」
「……怖い顔してた?」
「パソコン見てる時」
思い当たる節があったのか、侑生は視線を逸らした。
何を見ていたのかなんて、そんなことは聞かない。けれどきっと仕事絡みだろうから危ない事なのだろうと思う。
「ごめんね」
「ううん。まあ、怖い顔でも優しい顔してても、侑生なら何でも好き。優しい顔が一番ってだけ」
「洸ちゃん……!」
「うおっ!」
抱きつかれてバランスが崩れそうになった。慌てて侑生にしがみつく。
危ないだろ、と文句を言おうと口を開くより先に彼の唇に塞がれてしまい、言えなかった。それに加えて濃厚なキスをされたことでトロトロにされてしまったので、文句を言おうとしていたことすらも忘れて、ただただ侑生に甘やかされたのだった。
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