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第13話

侑生の朝は早い。 同じベッドで抱きしめられながら眠り、モソモソと隣から音が聞こえてきて温もりが消えるのは大体五時。 今日はベッドから抜けようとする侑生の服を掴み、阻止してやった。 驚いた顔をした彼がふにゃっと微笑んで、俺の手を掴む。 「洸ちゃん、おはよぉ。寝惚けてるのも可愛いね。」 「……侑生、まだ起きないで、一緒に寝よ。」 「うーん、寝たいんだけど、仕事がね……」 「……こんな朝早いのに仕事とか、どんだけブラックだよ。」 「これ以上ないくらい真っ黒だよ」 笑う侑生にムカついて、パシッと手を叩くと「ごめんね」と言って俺の頭を撫でてくる。 侑生の枕を取って、彼の代わりに抱きしめる。 「わぁ……写真撮ろ……」 「……どっか行け」 「洸ちゃん」 「仕事してこい」 ゲシゲシ侑生を蹴ると、彼はようやくベッドから降りた。 そして背中を優しく撫でられる。 「七時に起こしに来るね」 「……」 「朝ご飯はフレンチトーストだからね! 」 「……うん」 返事をすると、侑生は部屋を出ていった。 すっかり目を覚ましてしまった俺は起き上がって侑生の枕を元の場所に戻した。 そこに頭を乗せて、まだ少しシーツに残る体温を味わう。 十五分ほどして起き上がった。 フラフラ寝室を出てリビングに行くと、侑生が電話をしていて、壁にもたれ掛かりながら様子を眺める。 近い距離なのに、何を言っているのか聞こえにくくて分からない。分かっても怖い内容なら困るけど。 そのまま暫くそこにいると、突然ギュルっと振り返った侑生。そこは表情が無くてドキリとした。 「……また後で掛け直す。」 いつもとは違う、柔らかさなんて全く無い低い声でそう言った侑生。胸が高鳴って、威圧感のある今の彼にもし押し倒されたら──なんて妄想していると、電話を切った侑生が小さく息を吐いて笑顔を作る。 「起きたの?ごめんね。さっき話して目覚ましちゃった……?」 「……俺、さっきの侑生に抱かれたい。今みたいなフワフワじゃなくて」 「はっ!?」 「極道の侑生……って言えばいい?いつもと違う侑生に抱かれてみたい。」 そう言ってから、『あ』と思って慌てて首を左右に振る。 「ごめん。朝からこんなこと言って。今日も仕事なんだよな。俺は家にいるけど……あ、言ってた就職先の件、待ってるから何か分かったら教えてくれ。じゃあ俺、もう一眠りしてくるから。」 「洸ちゃん」 「何?」 逃げようとして、呼び止められる。 嫌な予感がするなぁと思いながら振り返れば、侑生は微笑んだまま。 「今日の夜、新しい遊びをしようか。」 「遠慮します」 眉間に皺を寄せて拒否をし、寝室に入る。 新しい遊びって……どうせセックスのことだ。 あんなことを言ったもんだから、きっと侑生はそういうプレイをするつもりだったんだろう。 俺としてはプレイとして極道な彼としたいわけじゃない。

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