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第15話
ソファーに寝転んで五分程経った後、起き上がってテレビをつけた。
たまたま観ていた番組で旅行先にオススメ、というコーナーがあった。
楽しくてそれを見ながら、侑生と旅行をする妄想を繰り広げてニヤニヤしてしまう。
「侑生と行くなら……うーん、どこでもいいな。」
京都に行って着物を着て、寺や神社を回ったり。
そのまま大阪に行ってたこ焼きも食べたい。
沖縄に行っても楽しそう。水着を着て海で泳ぎたい。
逆に北海道にも行きたい。本場のジンギスカンを食べてみたい。
「旅行の本、買いに行こう。」
顔を洗い、服を着替えて出かける準備を済ます。
まだ八時。出掛けるにしては早いけれど、散歩しつつカフェに寄って、時間になったら本屋に行けばいい。
そう思って家を出て、プラプラと適当に足を進めた。
マンションから繁華街までは目と鼻の先。
交通の便が良いから俺が動きやすいという事と、近くにお店が多くあって生活しやすいだろうという侑生の計らいによって選ばれた家。
おかげで働いている間はもちろん、今もすぐに街に出られるので有難い。因みに家賃は侑生が払うとうるさくて聞いてくれなかった。
何度か行ったことのあるオシャレなカフェに入り、甘いキャラメルラテを注文した。
窓際の席に座り、外を眺める。
目の前の道にはスーツを着た人達が歩いていくのを見て罪悪感に襲われる。
俺もああして働いていなければいけないのに、こんな所でのんびりしているなんて。
やっぱり、辞めない方がよかったのかな。
パワハラなんて耐えていれば、いつか無くなったかもしれないのに。
侑生にも迷惑をかけているし……。
溜息を吐き、俯く。
マイナスな気持ちに負けそうになって、慌てて顔を上げキャラメルラテを一口飲んだ。
「あれ、侑生」
そしてまた外を見ると、そこには見慣れた彼が。
朝着ていたスーツで、隣に少し顔の怖い部下だと思われる人を二人従えて車の横でスっと立っている。
凛々しい姿にうっとりとして、写真を撮ってやろうとスマホを構えると、そこに写り込んできた一人の女性。スラッとしたスタイルの美人な人だった。
侑生がにっこり笑い、その女性を車に案内する。
どうやら仲がいいらしい。
すぐに車は発進して、そこから消えた。
目を閉じて深呼吸をする。
何も問題ない。あれは仕事。それくらい分かる。
──ただ、とてつもなくお似合いに見えて寂しい。
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