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第17話

「でも、また働くんでしょ?」 「再開するまでの間なら問題ないかなって」 「うーん……。でもどうせならこれ、全部行きたくない?」 「行きたいけど、お金も掛かるし時間もそんなにないから、とりあえず一箇所だけ。」 侑生が雑誌を手に取ってページをペラペラと捲る。 その顔から少しずつ笑顔が無くなっていく。乗り気では無いのだろうか。 「洸ちゃんさ、俺と出掛けたいの?それともただ一緒に居たい?」 「一緒に居たいのはもちろんだけど……どこかに行って思い出作りしたい。」 正直に胸中を明かせば、侑生は怪訝な表情をする。 俺の考えていることを全て見透かされているような感覚がして居心地が悪い。 「思い出作りって……改まってする事?……何かあったの?」 「……行きたくないならそう言えばいいだろ」 「いや、行きたくないんじゃなくて、改まって思い出作りなんて言われたらおかしいなって思うだろ。まるで俺か洸が、お互いの前から居なくなるみたい。」 ぐっと唇を噛んでさっきの女性を思い出す。 お似合いだった二人の姿を。 「俺は居なくならないけど、侑生はわからないだろ。」 「は?」 「朝、女の人とお似合いだった。」 「朝?」 侑生は首を傾げた後、理解したようで頷いた。 「あれは仕事」 「知ってるよ」 「……じゃあ何でそんなに怒ってるの」 侑生の声が柔らかい。 彼は一切怒っていないのに、俺だけが自分の機嫌をとる事ができずにいる。 「……侑生もいつか、綺麗な女性と結婚するかもしれない。」 「……」 「そしたら俺は?……一人になる。侑生は俺なんか忘れて結婚した女性と、その人との間に産まれた子供と、幸せに暮らすんだ。」 「俺の幸せを勝手に決めるなよ」 聞こえてきた声がさっきとは違い、ずっと低くなった。 びっくりして顔を上げると、そこに表情は無い。 「俺を怒らせたいわけ?」 「ちが……」 「違う?なら何で俺の前からいつでも消えますよ、なんて聞き分けのいい人間演じてんの?」 ドキッと胸が嫌な音を立てた。 視線を逸らすと「こっち見ろ」と圧力のある声が鼓膜を揺らす。 目を合わせると段々体が縮こんだ。 「ゆ、侑生が、もし女性を選んだら、俺は、敵わない、から……」 「まず俺、今までに洸と離れるなんて話、一度でもした?」 「してないけど……」 「うん。俺もした覚えない。だから何で俺が洸と別れることになるのか理解できない。俺を怒らせたいとしか思えない」 フラっと立ち上がった侑生が俺のすぐそばに立った。 怖くてそっちを向けないでいると、肩をぽんと優しく叩かれる。 「今朝、洸が望んでたこと、できるね。」 「え……」 「俺、今割と怒ってるよ。」 強い力で手首を掴まれる。 驚いている間にその手を引かれ、寝室に連れ込まれた。

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