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第24話
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我慢できなかった。
俺は珍しく激怒した。
白だったはずのパーカーを手に持ち、ズンズンと歩いて仕事をしている侑生の背中にそれを叩き付ける。
「痛っ」
「侑生!色物とは分けろっていつも言ってるだろ!」
「え……ぁ、また俺、やっちゃった……?」
「これお気に入りなの知ってるだろ!なんでこんな真っ青になってるんだよ!」
奮発して好きなブランドのパーカーを買った。一度しか着ていないのにこの惨状。
「ごめんね、色物、分けてなかった……」
「奮発して買ったのに。お気に入りだったのに」
「ごめんなさい……」
シュン、とする侑生に「謝って許されるなら警察要らないんだからな!」と小学生みたいなことを言って、寝室に逃げるように入り鍵を掛けた。
ベッドに飛び乗って枕に顔を埋める。
……きついことを言ってしまったかもしれない。
侑生は俺の体調がおかしかった時も嫌がらずにずっと隣にいて支えてくれた。
自分の仕事もあるのに、料理や洗濯をしてくれているわけで。それなのに俺は……。
一万五千円のパーカーがどうしたっていうんだ。また買えばいい話じゃないか。
「うー……」
唸っていると、コンコンと控え目にドアがノックされる。
「洸ちゃん、ごめん。俺、同じ服買ってくるよ。」
「……要らない」
鍵を開けるか悩んで、結局ベッドから動かないでいる。
「洸ちゃん、ここ、開けてほしい。ちゃんと謝らせて」
「……もう謝らなくていい」
「……洸ちゃん」
「向こう行って。暫く放っておいて」
音が止んで、侑生がドアから離れたのがわかる。
体を起こして深く息を吐けば、本当に自分が子供みたいで嫌になった。
侑生の枕を引っ掴んで抱きしめる。スンスン匂いを嗅ぐと爽やかな香りがして、なんで匂いまでも格好いいんだと文句を言いたくなったと同時に、目に涙が滲んだ。
どうやら自分はパワハラ上司のおかげで元から脆いメンタルが余計に脆くなってしまったようで、情緒が不安定になってしまっているみたいだ。
「……侑生」
そんな時に効果的なのは侑生。
彼に抱きしめられるだけでホッとできる。
枕を置いて、のそのそ歩きゆっくりと解錠しドアを開ける。
「侑生、──ッ!?」
名前を呼べば来てくれるだろうと思っていた侑生は、ドアの横で立てた膝に顔を埋めるようにして座っていた。
驚いて声も出なくて、咄嗟に部屋に戻ろうとしたところ、侑生の腕が伸びてきてすぐ様ドアノブから手を離した。おかげで侑生の腕はドアに挟まれずに済んだけれど、俺は見事捕獲された。
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