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第26話
side.侑生
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夜八時。
仕事が入ったと言って洸を留守番させ、俺は一人繁華街を歩いていた。
何度か足を運んだことのあるソコは、洸が働いていた会社の近く。
部下の一人を見つけ、足を進めると俺に気付いたソイツが「案内します」と言って、繁華街から一転、人通りのない道にある廃れたビルに移動した。どうやらそのビルは昔、火事で焼けたらしい。
「──へえ、コイツか。」
汚れた地面に膝を着き、手を後ろ背に拘束されている男は、洸に暴力をふるい暴言を吐いて、更にはセクハラを行っていた糞爺だ。
大量の汗をかき、目をギョロギョロと泳がせて、大袈裟なほど震えている。
「なーんでこんな所で拘束されて、こわーい人達に囲まれてるんだろう、って思ってる?」
ゆっくりと近付いて、目の前に立ち男を見下ろす。
男は震えながら、ガクガクとまるで壊れたオモチャのように頷いた。
「思い当たる節は?」
「な、ななな、ない、です」
「ああ、残念。」
部下から拳銃を預かり、男の額に銃口を向けた。
「さて、さてさて。これで一発パーンしちゃえばお前は死ぬわけですが。」
「ヒィィ……!」
「現在お前は執行猶予中なので、まだ助かる見込みはあります。」
ニッコリ笑って、膝を折り目線の高さを合わせる。
「お前が会社で行っている悪事、ぜーんぶ吐こうか。」
「あ、ぁ……」
「横領に脱税、それから……パワハラにセクハラ。この前は女性社員に手出して告発されそうになったところをクビにしたらしいね。」
トン、トン、銃口を男の額に当てて小さな音を立てる。
だんだんとリズムを速くすれば、男は怯えてジョボジョボと汚く尿を漏らした。
「どうしようか。自分で言えそう?それとも言わせてほしい?もしくは言わないで死ぬ?」
「い、言いますっっ!全部、言います!」
「よーし。じゃあよろしくね」
ボイスレコーダーを用意して、男の前に置く。
すると男はポツポツと話し出して、話を終える頃には顔面を色んな液体で濡らしていた。面白かったので拘束を外し、写真を撮っておく。
さて、家に帰ろう。
ボイスレコーダーと写真のデータを部下に渡し、すぐに秘密裏に繋がっている警察に渡すように伝え、家に向かう。
繋がっているそいつは優秀で、割と上の立場に居たはずだから、明日にはきっと事件になっているだろう。
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