29 / 73
第29話
side.洸
■■■
夜中は散々な目に遭った。
現在、侑生を床に正座させ俺は仁王立ちで彼を見下ろしている。
「洸ちゃん、ごめんなさい……。帰ってきたら、寝てたから、なんだかムラムラしちゃって……」
「だからって寝てるところを襲うな!これで三日連続だし、俺ももうおじさんだから体力ないって……」
「洸ちゃんはまだまだお兄さんだよ」
「……お前も見た目はお兄さんでも中身はおじさんなんだからな。」
「……悲しくなった」
「ならもっと悲しそうな顔をしろ」
許してよぉ、と俺の足に擦りついてくる侑生に、はぁ……と深く息を吐く。
「わかったよ。もうしないって約束してくれたら許す」
「しません。洸ちゃんの嫌なことはもうしない」
「うん。じゃあこの話は終わり。テレビでも見よう」
二人でソファーに座り、テレビをつける。たまたまついたニュース番組では『書類送検』と表示されていた。
「何だろ。何か事件?」
「さあ?」
侑生はニコニコしながら、俺の手を握ったりクンクン匂いを嗅いできたり、時折キスをしてきたり、テレビに興味はないらしい。
「え、これ、俺の会社……」
「本当だねぇ」
「嘘、え、パワハラ上司書類送検されてんの!?どういう事!?」
「大変だねぇ」
侑生があまりにも興味なさげにしていたので、違和感を覚えた。俺に少しでも関わることなら何でも興味がある筈なのに。
「昨日の夜、何の仕事してた」
「……えっと」
「これ、お前がやったのか」
そう言いながらテレビを指さすと、彼は視線を逸らした。どうやら図星らしい。
「お、俺、何もしなくていいって、言ったのに……」
「いや、でも、でも、洸ちゃんの事だけじゃなくて、あの野郎、横領とか脱税とか、そういう事もしてて……」
「野郎って言わないって言っただろうがあ!!」
思わず大声を出して侑生に飛び掛った。
難なく俺を受け止めた彼は「ごめんねえっ!」と謝りながら俺の胸に顔を擦り付ける。
「許さん!……でも、でも……ありがとう」
「洸ちゃん!」
笑顔な彼につられて笑いそうになる。
けれど、やっぱり口が悪いのは許せなくて。
「野郎って言葉は二度と使うなあっ!」
「ん、ふふ、わかったよ」
ちゅ、と唇を彼のそれで塞がれる。
段々とキスは濃厚なものになった。
そして唇が離れたあと、心が少しスッキリしていることに気がついて、侑生に抱きつき「大好き」をオマケに送っておいた。
ともだちにシェアしよう!