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第29話

side.洸 ■■■ 夜中は散々な目に遭った。 現在、侑生を床に正座させ俺は仁王立ちで彼を見下ろしている。 「洸ちゃん、ごめんなさい……。帰ってきたら、寝てたから、なんだかムラムラしちゃって……」 「だからって寝てるところを襲うな!これで三日連続だし、俺ももうおじさんだから体力ないって……」 「洸ちゃんはまだまだお兄さんだよ」 「……お前も見た目はお兄さんでも中身はおじさんなんだからな。」 「……悲しくなった」 「ならもっと悲しそうな顔をしろ」 許してよぉ、と俺の足に擦りついてくる侑生に、はぁ……と深く息を吐く。 「わかったよ。もうしないって約束してくれたら許す」 「しません。洸ちゃんの嫌なことはもうしない」 「うん。じゃあこの話は終わり。テレビでも見よう」 二人でソファーに座り、テレビをつける。たまたまついたニュース番組では『書類送検』と表示されていた。 「何だろ。何か事件?」 「さあ?」 侑生はニコニコしながら、俺の手を握ったりクンクン匂いを嗅いできたり、時折キスをしてきたり、テレビに興味はないらしい。 「え、これ、俺の会社……」 「本当だねぇ」 「嘘、え、パワハラ上司書類送検されてんの!?どういう事!?」 「大変だねぇ」 侑生があまりにも興味なさげにしていたので、違和感を覚えた。俺に少しでも関わることなら何でも興味がある筈なのに。 「昨日の夜、何の仕事してた」 「……えっと」 「これ、お前がやったのか」 そう言いながらテレビを指さすと、彼は視線を逸らした。どうやら図星らしい。 「お、俺、何もしなくていいって、言ったのに……」 「いや、でも、でも、洸ちゃんの事だけじゃなくて、あの野郎、横領とか脱税とか、そういう事もしてて……」 「野郎って言わないって言っただろうがあ!!」 思わず大声を出して侑生に飛び掛った。 難なく俺を受け止めた彼は「ごめんねえっ!」と謝りながら俺の胸に顔を擦り付ける。 「許さん!……でも、でも……ありがとう」 「洸ちゃん!」 笑顔な彼につられて笑いそうになる。 けれど、やっぱり口が悪いのは許せなくて。 「野郎って言葉は二度と使うなあっ!」 「ん、ふふ、わかったよ」 ちゅ、と唇を彼のそれで塞がれる。 段々とキスは濃厚なものになった。 そして唇が離れたあと、心が少しスッキリしていることに気がついて、侑生に抱きつき「大好き」をオマケに送っておいた。

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