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第31話

侑生は仕事中、少しでも時間があれば連絡をくれる。 それは他愛もない内容。けれど俺はその連絡に癒されていた。 七時になって、侑生からの連絡はない。 彼は危ない職業で、更には忙しいのだから気を抜いていられないのだと思う。 「……熱上がってないといいけど」 呟いて、ため息を吐く。 今日は何時頃に帰ってくるだろう。 まともな食事を取ってないから、今日くらいは少しでも栄養のあるものを食べてほしい。 でも帰ってくるのが遅いと彼は食べずに、お風呂に入ったらそのまま眠ってしまうし、疲れて気絶するかのように眠る彼に食べなさいって強要しにくい。 どうしたものか……と考えていると、スマートフォンが震えた。 慌てて画面を見れば、侑生からメッセージが送られてきていて、タップして内容を見る。 「あの後眠れた?って……俺のことはいいから侑生のこと教えろよ……。」 そう思い、侑生が出掛けたあとに眠ったことと、体調はどうなのかと返信した。 すぐに大丈夫、と短い返事が来てこれは嘘だなと予想する。 侑生のことだから、俺に心配かけまいと強がっているに違いない。 でも一生懸命強がっている彼に、今は騙されてやる。 それ以上送る内容は思いつかなくて、ただ『よかった』と返事をしてスマートフォンを置いた。 さて、九時までは思うままに過ごそう。 時間になったら就活だ。 顔を洗い朝食を食べて、コーヒーを飲む。 侑生のことは気にしていても心配と不安でいっぱいになるだけなので、一度全てすっからかんに忘れるのがいい。 食器を洗ったら掃除をしよう。 それから洗濯機を回して……。 「うん。やっぱり忘れられるわけないな。心配だ……」 周りにいる人が侑生の体調を察して、早く帰れるように手配してくれたらいいのだけど。

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