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第32話
そんな俺の思いは虚しく、日付が変わっても彼は帰ってこない。
連絡も朝以来無いのでさすがに不安に思っていると、一時になる頃に玄関のドアが開いた。
慌てて立ち上がり玄関に行くと、侑生が壁に手を着いてフラフラしながら靴を脱いでいるところだった。
「侑生!」
「ん、洸ちゃん。ただいまぁ。まだ寝てなかったの……?」
「おかえり。侑生が心配だったんだよ!……それより、大丈夫か……?」
「ごめんねぇ。今日はちょっと、大丈夫じゃないっぽい。」
廊下に上がった侑生の顔は赤い。
手を伸ばして頬に触れると異様な程熱かった。
「洸ちゃんの手、気持ちいい……」
「もう寝ろ」
「ダメだよ。お風呂入ってないし」
「いいから!」
侑生の手を引いて寝室に連れて行く。
スーツを脱がせ、暖かい部屋着に着替えさせてからベッドに半ば押し倒すように寝かせた。
「飲み物持ってくる。あ、食べれそうなものとかある?どうせ晩飯も食べてないだろ。」
「……洸ちゃん」
「何?何か欲しいものある?」
「ううん。すぐ戻ってきてね」
「わかった」
急いでキッチンに行き水を持って戻る。
侑生にそれを飲ませて、ひとまず安心していると、侑生の隣の空いているスペースを彼がペシペシと叩くから、そこに寝転がった。
途端、強い力で抱きしめられてひしゃげた声が漏れてしまう。
「侑生ぅ……苦しいぃ……」
「頭痛い」
「病院は行って……ないよな。今から行く?」
「四時には家出る」
「……お前のとこ、俺の前の職場環境より最悪じゃん。」
「ん、ふふ」
「笑い事じゃないって」
グリグリ、胸に頭を押し付けてくる。
背中をそっと撫でてやると「疲れた」と一言呟いて落ちるように眠った。
体調不良と最近の忙しさから体が限界を迎えているのがわかる。
侑生の髪がいつもよりゴワゴワしてる。
眠る表情が辛そうだ。それを見て俺が悲しくなってしまう。
侑生をギュッと抱きしめる。
気が付けば俺もすっかり眠りに落ちていた。
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