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第34話

時間通りに侑生を起こし、彼は少しスッキリした顔で仕事に行った。 朝の四時。この時間に起きれたことが奇跡だな……と思いながら、侑生の体温が全く残っていないベッドに戻り一眠りすることに。 昨日は一日家にいたから、今日は出かけよう。 新しいカフェにでも行ってみて、いい雰囲気だったら今度は侑生を誘って一緒に行くのがいい。 楽しいことを考えていたらあっという間に眠りに落ちていた。 ■■■ 朝、ぐっすり眠った後十時頃に家を出て、予定通りカフェにやって来た。 初めて入るそこは静かで、一人でゆっくり過ごすことができそうな雰囲気だ。 温かい抹茶ラテと遅めの朝食でフレンチトーストを注文した。 届くまでスマートフォンを見て侑生から連絡が来てないかを何度も確認しては、何も反応のないそれに落胆する。 注文していた物が届いて、写真を撮る。 ピコン、と閃いて侑生にメッセージを送ることにする。カフェに来たことと、侑生も好きな雰囲気だと思うから今度は一緒に行こう、と書いて写真と一緒に送る。 忙しかったら返事が来ないだけだから、迷惑ではないと思う。 ──それにしても、だ。 侑生はもう少し周りに弱い部分を見せるべきだと思う。 どうせ侑生は、俺の前ではそうであっても部下の人達の前で弱った姿は見せない。 きっと堂々として、体調が悪いだなんて感じさせないんだろう。 だから誰も気が付かず、止められず、結果無理をさせてしまう。 「はぁ……」 一回痛い目に遭わないと分からないんだろうな。 痛い目に遭ってほしいわけじゃないけど、ちょっとくらい俺の思いを汲んでくれたっていいじゃないか。 「……あ、美味しい。」 フレンチトーストを一口サイズに切って食べると、外はカリッと中はフワッとの食感と、程よい甘さに蕩けそうになる。 今度は絶対侑生をつれてきて、これを一緒に食べよう。 彼はそれ程甘いものが好きじゃないから、きっと珈琲だけ飲んで、俺が食べているところを眺めるだけだろう。 どうせ頭の中では可愛いとか思っているんだ。 分けてあげようとすれば「俺はいいから洸ちゃんが全部食べなよ。美味しいんでしょ?」と優しい笑顔で言うはず。 そんなことを言われたってその時ばかりは侑生の口にそれを突っ込んで味わってもらうことに決めた。 好きな味じゃないかもしれないから、最初はほんの少しだけ。 美味しそうにしていたらそれから半分こしたりして。 侑生の忙しい時間が終えたら、そんなデートをしたいと思いながら、何も言わないスマートフォンを眺めた。

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