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第37話
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「洸ちゃん。あーんってして」
「甘えるな」
仲直りしてすぐ。
入院は少しの間続くので、侑生の面倒を見るために毎日病院に通っている。
「洸ちゃんの送ってくれたフレンチトースト美味しそうだった」
「今度一緒に行こう」
「うん。どこのお店?」
侑生のベッドに腰かけ、スマートフォンを二人で見る。距離がゼロになった途端、侑生が表情をスンと落とした。
「待って……洸ちゃんいい匂いする」
「え……っわ、おい、やめろ」
「ちょっとだけ匂い堪能させて」
お腹に回された手がスリスリと肌を撫でる。
首筋に顔が寄せられ、スンスン匂いを嗅がれると背中がゾクゾクしてしまう。
「っ、ちょ、侑生、本当やめろって……!」
「んー、洸ちゃんとセックスできないのが悔しい。」
「……早く怪我治して」
熱は下がり、残りは怪我だけ。
まだ安静にしていないといけないし、ここは病院なのでそういった行為はできない。
「忙しくなりだしてからずっと洸ちゃんに触れてないんだよ?どんな地獄だよ……」
「言わせてもらうけど、俺の方が地獄だから。ずっと一人で大丈夫かなって思いながら待ってる俺の気持ちを考えて。」
「……ごめんね」
「それに俺だって、侑生とシたい……。」
「洸ちゃん……!」
ガバッと抱きしめられ、苦しさに文句を言いたくなる反面、侑生の腕の中に居られる心地良さに安心する。
「刺されたおかげで、退院したら少しの間は家に居られるから、沢山セックスしようね。」
「刺されたおかげでって……」
「これが不幸中の幸いってやつ」
笑う侑生が突然動きを止めて固まった。
あっ、と思って顔を見上げると口元を引き攣らせている。
「えっ、もしかして痛い!?侑生、一回寝転んで……」
「……」
「侑生?お医者さん呼ぶ?」
「……呼ばない。痛み、治まった……」
彼を支えながらそっと寝かせて、額に薄くかいている冷や汗をタオルで拭う。
痛みに固まる侑生を見るのは初めてで怖かった。
「無理してない?大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「そう。……家に帰れてもしばらくはゆっくり過ごそう。」
「うん。二人っきりでね」
侑生が俺の手を取って、何かと思えば指先にキスをされる。
ドキッとして思わず彼から目を逸らした。
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