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第38話
一週間が経つと、ようやく退院することができて、部下さんに車でマンションまで送って貰う。
やっと家に二人きりになれて侑生は嬉しいらしく、玄関に入るや否や強く抱きしめられ勢いよくキスをされた。
「んっ、むぅ……っ!」
「洸ちゃん、好き。あー……まずい。スイッチ入っちゃう」
「おいっ!まだ玄関だぞっ!」
服の中に手が入ってきて慌ててそれを抑えるけれど、力では侑生に敵わない。
バタバタ暴れるとバランスを崩して廊下に倒れ込んだ。
びっくりしている間にまたキスをされて、侑生の肩を叩くとやっと体を離してくれた。
「ごめんねぇ……。洸ちゃんと家で二人っきりで、しかも時間があるって思ったら興奮しちゃって」
「何だそれ……」
上体を起こし座ったまま靴を脱いで、やっとリビングに行き荷物を置いた。
「お風呂に入りたい」と侑生が呟いたのが聞こえて、湯船の準備をする。
リビングに戻ると、疲れたのかソファーに寝転んだままの彼に声をかける。
「侑生、十五分くらいで湧くと思うから、ゆっくり入って。」
「え……えっ、お風呂の準備してくれたの……?」
「うん。着替えも用意しておくから。それまでちょっと寝とく?」
「……天使」
両手を口に当てて感動している侑生に大袈裟だと感じながらも、そんな彼の姿が可愛かったので、思わず髪をワシャワシャと撫でた。
「寝ないなら、とりあえず何か飲む?俺はコーヒーいれるけど。」
「俺も飲みたいなぁ。洸ちゃんの愛情増し増しで」
「……恥ずかしくないか?」
「ぜーんぜん」
面と向かってそんなことを言う彼。
言われた側の俺は恥ずかしいのに。
あまり気にせずにいようと話を終えてキッチンに行く。
じっと俺を見ているようで、侑生の視線を感じつつコーヒーをいれ、温かいマグカップを渡すと柔らかい笑顔を見せてきて、胸がキュンとした。
「洸ちゃん。隣座ってよ。」
「ん」
「お風呂一緒に入ろうよ。」
「すぐエッチなことするから嫌だ」
「それは……し、しない、からぁ……」
「なんだ今の間は。信用ならん」
シュン、とあからさまに落ち込む姿は間違いなく犬。
極道で、刺されることなんてよくある世界で生きているくせに、どうしてこんなにも犬に見えるんだ。
「……洸ちゃぁん」
「……っ、わかったよ……!」
そんな侑生の可愛さに完敗した。
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