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第45話
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しばらく侑生は休みなので、家にいる間はゆっくり過ごしてもらおうと思──っていたのだが。
「洸ちゃん、俺とデートして。」
「デートって……まだ本調子じゃないだろ」
「そんなことないって。洸ちゃんと色んなところ行きたい。あ、この前写真送ってくれたフレンチトーストのお店行こう?」
「いや、しんどくなったらどうすんの」
「部下を呼ぶ」
「それは職権乱用だろ」
「もう!洸ちゃんのワガママ!」
「ワガママはお前だ」
ソファーに座ってテレビを見ていると、隣にやって来た侑生が執拗いくらいデートに誘ってくる。
俺としてはやはり、しばらく療養してもらいたいので……本当は行きたいけれど、デートも我慢している。
ムスッとした表情を見せる彼に深く息を吐いて、わざと空気を入れて膨らましている頬を両手で挟み潰して目を合わせる。
「侑生、お願い。侑生が痛いのは嫌なんだよ。」
「……痛くないよ」
「そうなるかもしれないから、今週いっぱいは家でゆっくり過ごして。」
「……」
「お家デートってやつ。俺もどこにも行かないから」
『お家デート』と言った途端、侑生はわかりやすく嬉しそうにしだした。
俺の両手首を掴んで口角を上げる。
「洸ちゃん。ちゅーして」
「ん」
言われるがままキスをすると、ムフムフ笑う。どこか変態くさい。
「家にいるなら、何してもいい?」
「え……」
その顔のまま何をしてもいいか聞いてきた侑生に悩みながら頷いた。
家にいるなら走ったり過度な運動はしないだろうと思ったから。
「じゃあ洸ちゃん。ここ座って。ずっとくっついてて」
「えぇ……」
ここ、と言われたのは侑生の足の間。
ソファーに座る侑生のそこはどうみても窮屈そう。
「そんなところ、体縮こまる」
「大丈夫だよ。ほら早く」
仕方なくそこに座ると、彼の手によってクルっと体が回転されて、彼の膝の上で横抱きにされた。
呆然と侑生を見上げると、彼は微笑んだまま俺を見下ろしている。
「……侑生さん。なんですか、これ。」
「え、急に他人行儀。これはイチャイチャしたい俺の願望が具現化した体勢です。」
「は?何言ってんの」
侑生の頭脳がゼロになった気がして心配になる。
けれどこうしている間にも俺は絆されているようで、侑生の心音がよく聞こえ、ホッとして自然と彼に体重を預けていた。
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