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第47話

ああこれは、絶対に侑生からだな。 そう思って画面を見ると案の定、彼からの着信だった。 電話に出ると「洸!」と大きな声で名前を呼ばれ、漫画みたいにスマートフォンを耳から離した。 続けて何かを言っているけれど、申し訳ないがうるさすぎて耳に近づけたくない。 「侑生!ちょっと声大きい!耳痛くて聞いてられない!」 電話口でそう叫ぶ。 するとピタリと音が止んだ。 「……侑生?落ち着いた?」 「うん。ごめん」 少し焦った色をした声だけれど、話ができるくらいには落ち着いたらしい。 「いいよ。で、どうしたの?さっき連絡した件については大丈夫。気の所為かもしれないから──」 「今から帰るから家から出ないで。」 「あ……うん。出ないよ」 「すぐ帰る。このまま電話は繋げてて。」 「うん。」 思った以上に心配をかけているようだ。 ついこの間あんな事があったばかりなのに申し訳がない。 「忙しいのにごめん。」 「洸が謝る事じゃないだろ」 「でも……」 「それに多分、迷惑かけてるのは俺。俺がこんな仕事してるから洸が狙われてる。」 「それ、確定じゃないだろ。」 「ほぼ確定」 少しだけ重たい空気が走る。 ほぼ確定してるなら否定するのは違うだろうし。 「確かな情報が得られるのはいつ?それまで俺、家から出れない?」 「今晩にはわかるだろうけど……。わかっても暫くは出ないで。何を仕掛けてくるかはわからないから」 「でも侑生は仕事に行くんだろ。」 「うん。代わりに人を置いておく。多分、それが最善だから」 侑生の代わりに人を……? 俺達の家に他人が入ってくるのは正直、いい気がしない。 けれど仕方がない。極道(こういう)事については、侑生の言う事を聞いて、その通りにするのが一番だろうから。 「あと十分くらいで着くよ。」 「気を付けてね」 「うん」 帰ってきたらまず、何があったかをしっかり聞かれるんだろう。 とはいっても連絡したことで全部だから、同じことの繰り返しになるのだけれど。 十分程経って、侑生が帰宅した。 「おかえり」と玄関で出迎えてキスをすると、へにゃりと気の抜けた笑顔を見せてきたのに、ものの数秒でキリッとした表情に戻る。 「洸ちゃん。話聞かせて」 「うん」 自分の家なのに、緊張した空気が流れている。 嫌だなと思いながら、温かい珈琲をいれて、二人でソファーに座った。

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