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第52話
呼吸をするだけで精一杯だ。
侑生が何度も俺の名前を呼んで、好きだとか、愛してるだとか、沢山言葉をくれる。
それに返事をする余裕はなくて、気がつけばそんな言葉を貰う度に体に快感が走って何度か絶頂していた。
「ぁ、ゆう、……んっ、ちょっと、休憩、させて……っ」
「ん……」
体が震えて止まらない。
俺の中から出ていった侑生は、寝室を出るとすぐに水を持って戻って来た。
体を起こしてそれを飲むと、カラカラだった喉が少し潤った。
「侑生……ん、むぅ……」
「洸ちゃん、ごめんね、疲れた……?」
キスをしてきたかと思えば、不安そうに顔を覗き込んでくる侑生。
疲れてはいるけれど首を左右に振って「大丈夫」と伝えた。
だってやっぱり、なんだか様子がおかしいから。
「侑生、何をそんな、焦ってんの……?」
「……洸ちゃんを取られるって想像した」
「えぇ……誰に?あ、写真撮られたかもしれないから?」
「うん。……今回だけじゃなくて、今後のこと考えたら胸がソワソワしちゃって……」
隣に座り、俺にもたれた彼はありもしない未来に不安になっているらしい。
前に似たようなことで悩んでいた俺を叱ったくせに。
「侑生って大概頭悪いよな」
「急なディス」
「まあ、例えば俺が拐われたとしても自力で戻ってくるよ。」
「……それはいくら何でも無理があるでしょ」
くすくす笑った侑生は、俺の腹に手を回す。
不安が少しずつ薄れてきたみたいだ。
「無理じゃないし。俺だって男だ。侑生の為ならちゃんと戻ってくる。侑生が助けに来るのをただ待ってるだけなんて嫌だ。」
「キャー、イケメン!」
「茶化すなよ。俺は真剣だから」
「……洸ちゃんが真剣だから、心配になるよ。」
グラグラ揺れる目に見つめられると何も言えなくなる。
代わりに目元にキスをして、侑生の頭を抱えるように抱きしめた。
「大丈夫。何かあれば俺が侑生を守ってあげる。」
「え……な、に……?」
「俺は大丈夫。侑生も俺に守られてるから大丈夫。ずっと一緒だ。そうだろ?」
「……」
そう言って頭にキスをする。
侑生は俺を強く抱きしめて動かなくなった。
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