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第54話

「いやぁ、もう俺、今ならなんでも出来そう!洸ちゃんのおかげだよぉ。」 「あっそ」 「冷たぁ」 うつ伏せに倒れる俺に半分被さるようにして隣に寝転んだ侑生。 優しく腰を擦られる。温かくて気持ちがいい。 「洸ちゃん。お風呂入らない?」 「……入る、けど、その前に水欲しい……」 「あ、そうだよね。待っててね」 起き上がった侑生は全裸で部屋を出ていった。 せめて下着を履け。 直ぐに戻ってきた彼の手にはペットボトルが握られていて、俺をゆっくり起こすと口をつけて飲ませてくれる。 「こうやってしてると、洸ちゃんは俺がいないと死んじゃうって思えてすっごくドキドキするね。」 「実際そうだけど」 「あら……」 キョトンとした後顔を赤くする侑生。 そのリアクションに、俺はどんな反応をすればいいのかわからなくて無視をした。 「侑生、抱っこ。」 「はーい」 水を飲み終え、侑生に運ばれて風呂場に行く。 温かいお湯を浴びて、体を洗われるついでに優しくマッサージもされる。至れり尽くせりだ。 「洸ちゃん、寒くない?」 「うん」 「ごめんねぇ。まだお湯沸かしてなかったから」 「ううん。俺が準備するって言う侑生を止めたんだし。それより侑生の方が寒くない?大丈夫?」 「俺は大丈夫だよ。」 ちゅ、とキスをされる。 抱きしめられると思っていたより体は冷えていたようで彼の体が酷く温かく感じた。 「じゃあ、出よっか。」 「うん」 最後にシャワーを浴びて風呂場を出る。 体を拭いて服を着て、髪を乾かすとフワフワあくびが零れた。 「眠たい?いっぱい運動したもんね。ちょっと寝る?」 「ううん」 ソファーに腰を下ろし、続けてあくびをすれば侑生が小さく笑う。 やっぱり少し休もうかなと思った時、侑生のスマートフォンが音を立てた。 「洸ちゃん。ちょっと待っててね」 「うん」 画面を確認した彼はそう言ってリビングを出て行く。 凡そ仕事の電話だろう。写真を撮られていたのか、もしそうなら誰が撮ったのか、それがわかったのかもしれない。 ほんの少しだけ緊迫した空気が流れる。 けれどそれよりも眠気が強くて、下がってくる瞼に逆らうことなく目を閉じた。

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