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第64話
侑生は楽しそうにニコニコ笑っている。
隣にいたはずの仲宗根さんは少しだけ離れた場所にいるけれど、何かがあったらすぐに来れるような位置取りだった。
「今日は帰ってくるの早いね。」
「うん。洸ちゃんが外に出てる頃かなって思って、早く終わらせて帰ってきた。」
「ありがとう」
「どういたしましてぇ。ね、シュークリーム買ってきたよ。食べる?」
「うん。あ、仲宗根さんと百ちゃんの分もある?」
「あるよ」
侑生が傍に置いていた箱を開ける。
中を見るとキラキラとフィルターがかかっているようにすら思えるほど美味しそうなシュークリームがあった。
「戻りましたァー……って、あれ、侑生さん。お疲れ様です。」
「百、お前どこ行ってたの。」
「入浴剤取りに行ってました。洸さんが温泉入りたいって」
「ふーん」
侑生が優しくない声で百ちゃんと話している。
俺は楽しい気分になりたかったので、そんな二人の会話を割くように声を上げた。
「百ちゃん!仲宗根さん!シュークリーム食べよう!」
「わーい!侑生さん、ありがとうございます。」
「仲宗根さんも!」
「あ、はい。ありがとうございます」
全員がシュークリームを手に取ってあむあむ食べる。
勢いよく齧り付くとクリームが溢れてしまって、溢れそうになり慌てている姿を侑生が写真に収める。
「侑生!ヘルプ!」
「洸ちゃんはシュークリーム食べるの下手くそだねぇ。逆さまにして食べなよ。クリーム溢れないから」
「……?」
「まあ、もう遅いか。可愛いねえ。汚れたら拭いてあげるからとりあえず食べて」
「ヘルプって言ったのに……」
俺以外、皆上手に食べてる……と思いきや、まさかの仲宗根さんも俺と同じ状態だった。
百ちゃんがカラコロ笑っている。
「最っ高!こっち向いて!あー、あはは、ぐちゃぐちゃじゃん!」
「んぐ……っ、侑生さん、すみません……。」
「洸ちゃんは可愛いけどお前は可愛くないな」
苦戦する俺と仲宗根さんを、あとの二人はニマニマしながら眺めていた。
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