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第65話

侑生と部屋に戻り、クリームで汚れた手を洗った。 少しすると百ちゃんと仲宗根さんが来て、入浴剤を置いてすぐに部屋を出ていってしまう。 「温泉入りたいってなんで俺に言わないの!」 「百ちゃんと話してて思ったから」 「……俺とも話しよ」 「侑生すぐいなくなるじゃん。」 「グゥゥ……」 隣に座っていた侑生は、悔しそうな顔をしたあと俺の膝に倒れ込んだ。 流れで膝枕をすることになって、そろり頭を撫でてやる。 「それで、今日は寂しくなかった?」 「ん」 「よかった。仲宗根とも仲良くなれたんだね」 「年下だって聞いてビックリした」 「あはは。いつもビックリされてるよ」 笑っていた侑生が突然、スイッチが切り替わったみたいに真顔になって、俺のお腹に顔を押し付けた。 そこで匂いを嗅がれる。恥ずかしい。 「洸ちゃん」 「何?」 「今日はいいニュースがあるんだけどぉ、聞きたい?」 「え、うん!」 急な話だけれど、いいニュースはすごく気になる。 食い気味に返事をすると侑生は起き上がってスマートフォンを弄り俺の目の前に差し出した。 「新しい家、ここか、こっちか悩んでる。あともう少ししたら選んだどっちかに移動できるかもしれない」 「……本当?」 「うん。窮屈なのは疲れたでしょ」 「広くない家がいいって言っていたけれど、狭い部屋に篭もるのは嫌だよね」と侑生が苦笑して言う。 差し出されたスマートフォンを手に取り、じっと画面を見つめた。 「侑生はどっちがいい?」 「俺はどっちでも。あとは洸ちゃんに決めてもらおうと思って二択に絞ったんだけど……」 「そうなんだ。え、えー……悩むなぁ。壁は?薄くない?」 「勿論。洸ちゃんの声聞かせるのは嫌だから」 「ああ、会話を聞かれるの嫌だよね。」 「それもそうだけどぉ、ほら、甘えた声とかね。」 「っ!」 侑生が言わんとしてることがわかって顔がカッと熱くなる。 キッと睨みつければくすくす笑われただけで、痛くも痒くもないようだ。 「まだ時間はあるからゆっくり決めてもらって大丈夫だよ」 「一緒に決めようよ。二人で暮らすんだからさ」 「ぉ、おお……うん。」 二人で小さな画面を覗き込むために密着する。 「内見は?したの?」 「したよ。綺麗だったし、セキュリティもバッチリ。」 「そっか。こっちだったら……この部屋にベッド置きたいな。どう?」 「いいね。ベッドは前の持っていきたい?」 「そりゃいけるなら……無駄にしたくないし。けど部屋に戻れないなら新しいの買うしかないもんなぁ」 「同じベッド買おうか?」 「そこは別にこだわらないかな。……あ、でも」 そう言って顔を上げると侑生の顔がすごく近くにあって、思わずキスをしてしまった。すごく綺麗でびっくりした。侑生は満更でもなさそうだ。 「大きさは同じのがいいな」 「……大きいとくっつくのに理由がいるから?」 「うん」 「可愛い」 強く抱きしめられた。 スマートフォンを適当な場所において、侑生に覆い被さる。 「今日はもう仕事ない?」 「うん」 「じゃあちょっと、このままゆっくりしたいな。」 もう一度キスをして侑生の上に体を重ねた。

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