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第66話
侑生にはじっとしててと一言伝え、服を捲り胸に耳を当てる。
トクトク動く彼の心臓の音にホッとした。
「あー、あの、洸ちゃん?」
「ちょっと黙って」
「……」
しばらくその音を聞いているとウトウトしてしまい、侑生の胸に擦りついたまま目を閉じようとして、背中を軽く叩かれる。
「洸さん。もしかして今、寝ようとしましたか。」
「……?」
「え、この状況で?寝ようとした?何『悪い?』みたいな顔してるの?悪いよ。俺をこんな風にした責任をとってよ」
「どんな風にもなってないと思いますが」
「なったの!俺の気持ちが!ヤる気百パーなの!」
「俺はヤる気ないですが……」
「……」
言い返してこないので納得してくれたのだと思って、もう一度目を閉じる。
セックスしなくても、こうしてくっついているだけで幸せを感じられるのだ。
「……洸ちゃぁん」
「んー?」
「落ち着く?」
「うん。寝ちゃいそう」
「……いいよ。今日は我慢するよ」
「ありがとう」
頭を撫でられて、本格的に眠りに落ちそうになる。
でもこのまま眠るのはもったいない。だって侑生が早く帰ってきたから。
どうせならグダグダ話したり、テレビを見たり、そうした『普通』をしていたい。
「あれ、寝ないの?」
「うん」
起き上がってググッと伸びをする。
侑生を引き起こせばデロデロに甘い顔で笑っていた。
「どうしたの、洸ちゃん。」
「うん。侑生と話したいなって。それかテレビでも見る?」
「洸ちゃんと話したい」
「うん。まあでも、俺は何もネタが無いんだよな。ずっとここに居るし」
「そうだよねぇ。俺はねぇ……んー……やーめた。ゲームでもしよう。好きなところ言い合う?えっとねえ、全部!」
「終了」
楽しそうな侑生につられて笑う。
こういう時間って大切だよなと思いながら、侑生の頭を抱えるように勢いよく抱きしめた。
「いて」と零した侑生は俺の背中をポンポン叩く。
「洸ちゃんは今、情緒不安定なんだよね。」
「うん。侑生とあんまり話せてないから」
「ごめんね。……もう終わるからね」
「……ありがとう」
腕の力を弛め、侑生をじっと見つめて、額にちゅっとキスをした。
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