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第68話

■ 起きたら隣に侑生がいないのは当たり前になりつつある。 けれど今日は朝彼に起こされた記憶があって、何か話したような気もする。 「……ダメだ。思い出せない」 眠たさに負けたことしかわからずにベッドの上で胡座をかいていると、「失礼します」と百ちゃんの声が聞こえた。 「あ、起きてたんですね。ご飯持ってきたんですけど食べませんか?」 「食べます。あ、でもその前に顔洗う」 「はーい。用意しとくんでゆっくりどうぞ」 彼の言葉に甘えて、ゆっくりと朝の準備をする。 顔を洗歯を磨いて寝癖を直し、漸く百ちゃんのところへ行けば彼はテレビで何故か教育番組を見ていた。 「……何で教育番組?」 「こういうの小さい時見れなかったんで初めて見た時面白かったんですよね。だからたまにつけては見ちゃうんです。……あ、変えてもらっていいですよ。何見ます?」 「小さい時見れなかった……?あ、テレビ見ながらご飯はダメだったとか?礼儀作法に厳しいお家もあるもんね。」 「あ、いえ。ずっと部屋に閉じ込められてて、テレビとかなかったんで。」 なんとも無いようにそう言った百ちゃんに思わず体が固まる。 部屋に閉じ込められていた?それってつまり監禁されていたってこと? ご飯はどうしていたんだろう。いやそれより両親は? 頭の中でグルグルと考えていると、彼がハッと俺を見て眉を八の字に下げる。 「ごめんなさい。こんな話聞きたくなかったですよね。以後気をつけます」 「あ、いや……俺の方こそごめんなさい。そういう事情だって察せなくて……」 「普通は無いですから気にしないでください。ご飯食べましょ。ね?ほら、箸持って。はい。いただきまーす。」 教育番組からニュース番組にサッと変えた彼は、俺に箸を持たせると満足気に食事を始める。 多分これはもう謝るなということだと思って、彼に促されるまま手と口を動かした。

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