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第72話

侑生が居ない夜はいつもひとりで眠る。 今日は侑生が居ない。気持ちも明るくはなれなくて困ってしまう。 なかなか進まない箸を百ちゃんに促されて頑張って動かし、完食をしたあと直ぐにお風呂に入った。 髪を乾かし、ベッドに寝転ぶと百ちゃん達は部屋を出ていく。 目を閉じて考えないように早く眠ろうと深く呼吸をすると、頭の中に響く発砲音。 「っ!」 バッと目を開けて、飛び起きるように体を起こす。 侑生に何も無かったとはいえ、あの光景はショックで心臓がバクバクと音を立てた。 仲宗根さんは確か、外にいるはず。 ヨロヨロとベッドを降りてドアを開ける。 案の定そこには彼がいて、俺に気がついた彼が首を傾げた。 手を伸ばしてそっと彼の服の裾を引っ張る。 「!……どうしましたか」 「あの……」 「……眠れそうにない?」 「……恥ずかしながら」 「無理に眠らなくていいです。テレビ見たり、本読んだり……何かしたいことは?」 そう聞かれて考えて、何もしたいことは無く首を左右に振る。 「あ、でも……侑生に電話してもいいかな」 「いいと思いますよ」 薄く笑った彼に安心して、そろっと手を離し部屋に戻る。 スマートフォンを手に取って、少し悩みつつ侑生の電話番号をタップした。 寝ていたら迷惑だよなと思っても、不安で我慢できなかった。 侑生なら許してくれるだろう。 少しして「もしもし」と少し掠れた低い声が聞こえた。 侑生の寝起きの声。ドキドキする。 「ゆ、侑生、ごめん、寝てたのに……」 「ン、大丈夫だよ。洸ちゃん、ごめんね。」 「侑生が謝ることないよ。……それより、体は……?」 「問題無いよ。明日には帰る。本当は今日帰るつもりだったんだけど、止められちゃって。」 ポスッとベッドに寝転がる。 目を閉じるとすぐ傍に彼がいて、一緒に眠っているような気分になった。 「洸ちゃん、眠れなかった?」 「……うん。嫌な音、頭にこびりついてて。」 「怖かったよね。ごめんね。」 「侑生も、目の前で倒れたから……」 「……あの場にいたの?」 「うん。侑生が帰ってくるって聞いたから、玄関まで迎えに行こうとして」 「……聞いてない。百と仲宗根は居たんだよね?」 「居たよ。音がして直ぐに部屋に連れて行かれて」 「そう」 侑生の声が一層低くなった。 もしかして怒ってる……? 「ごめんなさい。勝手に部屋出て」 「……もうしないで」 「うん」 俺にはそうして許してくれたけれど、もしかすると百ちゃんと仲宗根さんが怒られるかもしれない。 申し訳ないけれど、俺に組織のことをどうこう言う筋合いはないので、心の中で彼らに謝るしか無かった。

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