73 / 73

第73話

■ どうやら俺は侑生と話をしているうちに眠ってしまったらしい。 ハッと目が覚めると電話は繋がったままで、スマートフォンに表示されている時間は午前六時。 「……うそ、寝ちゃった……」 ひとり、繋がったままの電話にアセアセしていると「あ、起きた?」と侑生の声が聞こえて慌てて頷く。 「起きた、おはよう!」 「昨日そのまま寝ちゃったね、俺達。」 クスクス笑う声が聞こえて、上がっていた肩をスンと落とす。 「びっくりした……侑生はいつ起きたの?」 「ついさっきだよ。そろそろ帰る準備しようと思って」 「そっか……ん?早くない?六時だよ」 「早く帰りたいからねぇ」 足を撃たれたのに、どうしてそんなに平気そうでいるんだろう。 もし俺が侑生だったら、きっと完全に治るまで不安だから病院で過ごさせてくれとお願いすると思う。 「足、痛くない?」 「大丈夫だよ。ごめんね洸ちゃん。今から帰る準備するから、帰ったらいっぱい話そうか。」 「……うん」 「待っててね。何か欲しいものある?」 俺をとことん甘やかそうとする侑生。 思わず小さな溜息が漏れた。 「え、洸ちゃん……?」 「何も要らない。だから早く帰ってきて。」 「俺だけが必要ってこと……!?」 「可愛い」とか「嬉しい」とか言って騒ぎ出した彼が面倒くさくなってきた。 その上、侑生の言葉を否定することもできないから、なんだか恥ずかしい。 そんな気持ちで一方的に電話を切った。

ともだちにシェアしよう!