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第18話

「ね、ねこちゃん、ちょっと」  布団を敷くとかまどろっこしいことを言っている男を強引に押し倒して、慣れた手で全部脱がせてしまうと、キスだけで大きくなりかけている立派な中心を手に取ったところで、うろたえる相手からストップがかかる。 「なに?」 「な、なんか展開早くて、俺……」 「だって、舐めてやりてーんだもん」 「な、舐め……」 「やなのかよ?」 「い、嫌なわけないよ。でも無理させたくないんだ。俺はねこちゃんの、その、お客さんじゃないから」  この期に及んで何をゴチャゴチャ言っているのかさっぱりわからない。 「おまえのこと気持ちよくしてやりてーんだもん。俺、体はあんまよくないかもしんないけど、フェラは結構うまいよ?」  普通のことを普通に言ったつもりなのに、月峰は真っ赤になって目をパチクリさせている。でも右手で握った彼自身は、清のそのあけすけな一言で明らかに硬度を増したようだ。  何百本ものペニスを咥えてきたけれど、今目の前にあるそれが一番愛しくて、清はたまらず舌の先で先端を舐めた。 「ねこちゃん、待って」  大きな手で頭をぐるぐると撫でられ、清はうるさそうに顔を上げる。 「何だよ」 「君も脱いで欲しい」  ためらわずストレートに告げられた。 「え、やだよ。見たら絶対萎えるって」  全盛期よりはすっかり痩せて肌の色艶もなくなった自分の体は、まったく鑑賞に値しない引け目すら感じる代物だった。できれば昼日中から晒したくない。 「おまえが挿れたければ下だけ下ろしてやるから、それで……」 「脱がしてもいい?」  清の言葉を遮り、月峰は重ねて聞いてくる。その顔はおかしいくらい真剣だ。  いいとも言っていないのに大きな手が伸びてくる。20センチ・20キロも体格差のある相手に捕まえられては完全に敵わない。  Tシャツをたくしあげられあっさりと頭から抜かれてしまい、痩せこけた胸を見られたくなくて両腕でガードした。そこで隙ができてしまって下に手をかけられる。不器用そうな指は意外にもスマートにベルトをはずし、下着ごとジーンズを下ろされた清は、嫌だ嫌だとじたばたしている間に呆気なく全裸に剥かれてしまう。  客に裸になれと言われて仕方なく自分で脱いだことならあったが、こんなふうに脱がされた挙句に嬉しそうにみつめられ抱き締められて、全身をくまなく優しく指先で探られるなんて妙なことはされたことがなかった。 「やだやだやだ! やめろよ、変態!」  真っ赤になって暴れる清を月峰は笑いながら撫で回したり、いろいろなところに口付けたりして翻弄する。  弄り回されているうちに、清も貧弱な体に対する引け目がだんだんと薄れ、全身が熱を帯びてくる。仕事と割り切っていたセックスでは得られない恥じらいに満ちた悦びは、五代が相手のときにはまったく知らなかった。  見栄も飾りもない、純粋で温かくて、恥ずかしいくらい気持ちいいものが内から溢れ出してくる。  月峰はさんざん清をいじくり回すと、最後にはしっかりとその両腕に包んでギュッと抱き締めてくれた。 「ねこちゃん、大好きだよ」  耳元で囁かれ、バージンみたいに体が震えた。照れくささにもう我慢ができなくなった。 「やっぱやらせろ!」  そう宣言すると体をずらし、有無を言わさず月峰の股間に顔を埋める。清が心配することは全然なく、月峰の方としては痩せこけた貧相な体で十分満足だったらしく、その立派な中心はすっかり勃ち上がってくれている。  萎えられなかったと思っただけで嬉しくて、愛おしいそれを迷わず咥えた。手で幹をさするようにしながら先端を舌で丹念にしゃぶり、唇で引き絞るように吸い上げる。 「ねこちゃん」  月峰の吐息混じりの声が届き、答えられない清は喉の奥でくぐもった返事をした。 「そのままお尻こっちに向けて。俺もしてあげたいから」  その要望を理解する前に、軽い体を持ち上げられて、クルリと体勢を逆にされてしまった。羞恥心など完全に枯れていると思っていたのに、月峰の顔の上にちょうど膝を開いてまたがる形になってしまったと気付きうろたえる。反射的に逃げようとしたが、月峰の両手が腰を掴んで逃がしてくれない。 「や、ぁっ……」  中心を生温かいものに包まれる感触に思わず相手のものから唇を離し、玄人とは思えない初心な声を上げてしまう。誰かにしてやったことがあるんじゃないかと邪推し嫉妬してしまうくらい、月峰の舌は繊細に動いて清を追い上げる。  勝負ではないけれどド素人に負けてはプロの名がすたると、清も必死で愛撫を再開するが、押し寄せる波みたいな快感に流され、屈服してしまいそうになる。客はもちろんのこと、五代だってこんなに執拗に撫で回したり舐めたりしてじっくりと高めてくれたことはない。常に奉仕を要求され、相手を気持よくいかせることが清の役割だった。 「とおるっ、やだっ、やだって」  甘く訴える声は聞き流され、月峰は清の腰を抱えた両手をグッと引き寄せると、双球から後孔に至るまで丹念に唇を這わせてくる。じっくりと濡らし、体内に分け入ってくる舌の感触が背筋を通って脳髄までダイレクトに刺激を送り込む。 「あぁ、ん……や、だよぉ……」 「ねこちゃん……気持ちいい?」  月峰のまだまだ余裕たっぷりの憎らしい声が聞こえてくる。 「恥ずかしいよっ。そ、そんなこと、すんなっ」 「恥ずかしくないよ。ねこちゃんは体中どこも全部可愛い。食べちゃいたいくらいだ」  どんな顔をしてそんなことを言っているのかと思うと、さらに羞恥にいたたまれなくなる。おそらく清を喜ばすための計算づくのリップサービスではなく、彼の場合本気で言っているのだろう。しかも清が泣き声を上げるほど月峰の思う壺のようで、嬉しそうに舌を使う音がやけに高く響いてたまらなくなる。 「うぅっ、チクショー」  千人斬りの元売れっ子が翻弄されてどうすると、清も負けじとしゃぶりつき唇で丹念に上下に擦ると、月峰自身の先端からにじみ出た苦いものが口中に広がった。感じてもらえるのがこんなに嬉しいと思った相手はいない。  そのまま思い切り口の中に出してしまってほしかったのに、いきなり体が浮いたと思うとグルリと視界が回り、あっと思ったときには畳の上に仰向けに寝かされていた。 「やだ、もっとしたいっ」 「ねこちゃん、挿れさせて。俺ねこちゃんの中に入りたい」

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