いいとも言っていないのに両脚を肩に抱え上げられる。十分弄られた柔らかい場所にさっきまで口の中で慈しんでいたものが押し付けられ、少しづつ沈められていく。 「あ……ぁっ……」 　挿れられるのは相当久しぶりだ。路上の客は手や口で奉仕するだけで十分満足してくれたし、清の痩せ細った体を見ると哀れに感じるのか、あえて挿入まで及ぼうという酔狂な者もいなかった。客の取りすぎでゆるゆるになってるんじゃないかと五代に揶揄されたその場所は、逆にきつすぎるほどで、侵入してくる異物を押し返そうと締め上げる。 「ね、ねこちゃん、すごいきつ……大丈夫？」 「だ、大丈夫なわけなっ……あぁっ、やっ……」 「ごめん、どうしよう、止まらない……ごめんね」 　謝りながら月峰は徐々に腰を進めてくる。 「お、おまえっ……俺なんかに挿れて、気持ちいいのかよ……？」 　心の中の疑問が思わず素直に口をついて出た。ギュッと瞑っていた目を恐る恐る開くと、快感に潤む常にない色香に満ちた月峰の目とぶつかった。心臓が大きく打って体が震えた。 「気持ち、いいよ。夢みたいに気持ちいい」 　月峰は聞いたこともないほどの甘さを含んだ掠れ声でつぶやき、脚を押さえ付けていた手を胸に持っていく。すっかり尖り切った両方の突起を指先で弾かれ、清は全身を駆け抜ける快感に身悶える。 「あぁっ……やだっ……」 　じわじわと入り込んでくる熱をすっかり飲み込まされ、動こうとしないそれにもどかしげに腰をよじると、月峰が喉の奥でうめいて深く息を吐いた。 「や、やだっ、やだったらもうっ……早く動けよぉ。焦らしプレイかよ？　バカっ」 　握った拳で胸を叩くと、両手首を捕まえられてしまった。そのまま上体がかぶさってきて深く口付けられる。 　解放された手を広い背中に回した。何度も繰り返されるキスで遠くなる意識に、月峰の熱っぽい声が入り込んでくる。 「だって……少しでも長く、ねこちゃんと繋がっていたい」 　耳元から注ぎ込まれる声は甘く優しくて、清は自分が練乳をたっぷりかけられた酸っぱい苺になったみたいな気分になる。 「いっそこのまま一つにくっついちゃいたいよ。そうすればもう、君は誰のものにもならないから」 「もう俺、他のヤツと寝ない……」 　自然に口が動いていた。 「俺、シゴト、もうやだ。やめて、いい……？」 　月峰の瞳が大きく見開かれ、次の瞬間には全開の笑顔が向けられた。 「やめてほしい」 　月峰はそう言ってもう一度清に口付けると、ゆっくりと腰を使い始める。 「シゴトやめて、ゆっくりしてていいから。今まで大変だった分、好きなことしてていいから。贅沢はさせてあげられないけど、欲しいものは俺が何でも買ってあげる」 「あっ、あ、ん……とおるっ」 　中を穿つ速度は次第に速くなる。深く浅く、変化のある動きで月峰は清をかき回す。 「わがまま、なんでも聞いてあげる。一生大事にしてあげる。誰にも乱暴させたりしない。ねこちゃんが二度と泣かないように、俺が全力で守ってあげるよ。約束する」 　浅い部分で感じる一点を何度も擦られて、頭の中がスパークする。どんなに挿入がうまい客にだって、こんなに感じたことはない。もちろん五代にもだ。 「俺、おまえのこと、好きっ……」 　なんとか声に出して伝えた。自分で言葉にして、そうか、だからこんなに感じるんだと納得した。 　気持ちが先にあるから、体だって歓ぶのだ。そんな基本的なことすら、自分は今まで知らなかった。 　誰にも大切にされなかったこの体も心も、彼にやってしまおうと思った。誰よりも大切にしてくれると言っている、嘘をつかない澄んだ瞳のこの男に。 「ねこちゃん……っ」 　月峰の腹で擦られ勃ち上がった中心が、堪えきれず弾ける。思い切り締め付けた相手も、ほとんど同時に中で達するのを感じた。 『二度と泣かないように』とか言っていたくせに、いきなり泣かせてるじゃないかバカ、と口を開こうとしたが、全身が溶けたアイスクリームみたいになってしまって言葉が出てこなかった。 　頬の傷痕を伝い落ちる涙の一滴を、月峰の優しい唇が拭ってくれた。