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ep.4

「やめ……ろっ」  声にならない声を必死に紡いでアーチボルドは自分を組み敷く憎いαに抵抗する。  なのに体のどこにも力は入らなくて、柊一から漂う強いα特有の濃い匂いが鼻腔を通って、麻酔みたいに体を重く麻痺させた。 ──いやだ、いやだ、いやだ!!  アーチボルドは恐ろしさのあまり強く目を瞑り、自分の意思とは関係なく勝手に溢れ出す涙を拭うことすらできない。  柊一はアーチボルドの体を服の上からきつく抱きしめ、何度も強く口付けてはアーチボルドの肌やΩの甘い香りを堪能するかのようにシャツを寛げ、首筋が赤くなるまで執拗に吸った。  柊一の茶色い髪や素肌がアーチボルドの頬に触れるたび、αの匂いがどんどん濃くなっていくのを感じた。  心臓があまりにも痛くて、アーチボルドは服の上から胸を掴んだ。次第に呼吸も早くなり、心臓が早く打ち始めるのが骨を伝わり頭の中にまで聞こえた。  ふっとお互いの視線が重なり、涙で顔の濡れるアーチボルドの頬を柊一が優しく拭った。    触るな──、そう言いたいのに……、声が出ない。  アーチボルドはそれを柊一が今しているキスのせいだと思いたい一心で再び瞼を閉じた──。  乱暴に胸の尖りを噛まれ、痛みでアーチボルドはビクリと片膝を跳ねあげた。  男のされるがままに白い肌をすべてさらされ、全身を大きな手で撫でられ、唇を這わされ……心は激しく拒絶しているのに、アーチボルドはαの強いオーラ相手に体が麻痺してしまい、なんの抵抗もすることが出来なかった。  背が高いだけの軟弱な男だと思ったその体は想像以上に鍛えあげられていて、アーチボルドの鍛えた腹筋なんてそれを思えば可愛く思えるほどだった。  何度も何度も赤く腫れるまで胸をいじられ、アーチボルドはまだかろうじて動く首を拒絶の現れとして何度も横に振る。 「俺、普段はこんな無茶苦茶じゃ……ないんだ、けど……信じてくれる?」  男が逞しく反り返った雄をアーチボルドの手を取り無理矢理触らせながら、熱を孕んだ瞳で女々しく言い訳を繰り返す。  涙目でアーチボルドは睨み返すが、その綺麗すぎる蒼い瞳から逃げ出すように柊一は深いキスでかわした。 「クソ……もっ……なあ、挿れていい? はやく挿れたい……」 「やめ……ろ、殺……殺してやる……っ」  アーチボルドは力の入らない指で何度も柊一の肩を押し返しながら、言葉通り無駄な抵抗を繰り返す。  柊一はさっさと自分の欲望の塊をアーチボルドの中に押し込みたいのを必死に我慢しながら、わずかに残った理性でそこを傷付けないよう、アーチボルドの熱くて狭い場所を何度も優しく慣らし続けた。 ──嫌なのに、嫌いなのに、憎いのに──。  長い指が自分の中を這い回り、あるところを強く擦られると、アーチボルドは今まで感じたこともない甘くて恐ろしい刺激にビクビクと腰を痙攣させた。  何度も抽送を繰り返す柊一の指の間から、アーチボルドの甘い蜜が溢れてきて、言葉と裏腹なアーチボルドの素直で可愛げのある反応に、柊一は余計興奮してしまい無意識に悪趣味な笑みを浮かべた。 「やっ、ん……っあ……んっ、ん……っいやぁ……」 ──気持ち良い……。  もしそう声に出してしまっていたなら自分自身を殺してやりたい。  アーチボルドはすでに快感に支配されており、濡れた唇から喘ぎに近い息を繰り返し漏らしながら、柊一の強く執拗な愛撫に赤く染まった肩を何度も揺らした。  キン、と短く耳鳴りがして、アーチボルドは自身のヒートが来るのを感じた。 ──もう、ダメ……だ──。  アーチボルドから一気に濃い香りが立ち込めて、柊一の背筋に初めて知る強い刺激が稲妻のように走り抜けた。  その甘い香りを嗅いだ瞬間、柊一は瞳孔を開かせ、もう何も我慢できない理性を失った獣のように一気に自身の雄をアーチボルドの中に沈めた。 「ああ──っ!」  ピリッとアーチボルドから準備の追いつかない慣れない反応を感じたが、柊一はもう一切気遣う余裕がなくて、勝手に揺れる腰を止めることが出来なかった。  中を貫かれるたびにアーチボルドは短く悲鳴を上げ、ポロポロと涙を流してシーツに助けを求めて逃げ惑った。  柊一はアーチボルドを強く前から抱きしめ、逃げ惑う手を自分の背中に回させた。 「痛ッ……、いやっ、あっああ……っあーーっ」  何度も深く穿つたびにアーチボルドは強く柊一を締め付けた。拒絶しているはずなのに、もっとここにいろと誘うように中を熱く畝らせ、柊一をひどく感じさせた。 「やべぇ、気持ちぃ……なぁ、なんだよ、お前の中どうなってんの──クソ……も、止まんねぇ……っ」  柊一は眉根を寄せて目を瞑り、全身を襲う気が狂いそうに強烈で甘美な快感に体温を上昇させ、勝手に漏れるうわ言を繰り返しながらアーチボルドを深く深く、奥の奥まで何度も味わった。 「っ……あっ、ああ……んっあ、あ……っ」  形を変えた柊一の雄を深く飲み込んで、喰らい付くようにそれを締め付ける。  アーチボルドは赤く染まった全身を震わせ、柊一が自分の中で果てるのを感じた。  身体の中に他人の熱が一気に注がれ、アーチボルドはそれを無意識に飲み干すように狭い場所をさらに強く締め付けた。  ずるりと体の中から熱の塊がいなくなって、アーチボルドは真っ赤に腫れた場所をひくひくと濡らしたまま、薄い胸を大きく上下させ乱れた呼吸を整えようと必死だった。  自分を襲った得体の知れない快感に怯えながら涙を流して呆然とした瞳で天井を眺めている。  なのに、柊一はまだ落ち着くことのないアーチボルドの腰を持ち上げると簡単に体をひっくり返し、背後から引いて胸をシーツにつけさせたまま尻だけを高く突き上げさせた。 「やめろっ……」  屈辱的な姿勢にアーチボルドが激昂しても、柊一は構うことなくピンク色に染まった小さな尻を好きに撫でまわし、指で開いて丸見えになった濡れた場所を舌で執拗に犯した。アーチボルドは枕を抱き寄せて、柊一が繰り返す激しい愛撫と快感のせいで無意識に喉から漏れ出る声を必死に押さえ込んだ。  節高く長い指でさっき柊一が出したものとアーチボルドの愛液とをぐちゃぐちゃに掻き回され、アーチボルドは脳が理性を失い、何度も腰が砕けそうになっていた。 「アーチー……」  急に愛称で呼ばれて、アーチボルドは何故かドキリとした。アーチボルドは困惑している眉を下げたまま、背後にいる柊一の顔を覗き見ると、柊一はうっとりとした表情で、再び熱を持ち直した自身の雄をアーチボルドの濡れた場所へとあてがっていた。  ゆっくりと、男の熱が自分の狭い場所を広げながら入ってくる生々しい感覚がそこからはっきりと伝わってきて、アーチボルドは嘘みたいに高い声が喉から漏れた。 「すげぇ可愛い声……気持ちい? 中……もっと擦って欲しい?」  それは決して柊一の優しさなどではなかった──。  単なるαの独占欲と支配欲の現れで、αの自分を嫌悪し、反抗してばかりなアーチボルド(Ω)を完全に懐柔してしまいたかったのだ──。 「……ナカ……?」    アーチボルドは青く潤んだ瞳を蕩揺させ、ほとんどの理性を失くしていたせいか、言葉の意味をうまく理解できなくなっているようだった──。  反応の弱いアーチボルドに少し苛立ったのか、柊一は一度だけ中を深く奥まで貫いた。  再び上がった高い嬌声に、柊一は口の端だけをあげてアーチボルドの艶っぽい顔を再び覗き込む。 「今みたいなの、いっぱいして欲しい? お前の中をいっぱい擦って、気持ちよくして……さっきみたいに俺のを全部この中に出すの──どう? して欲しい?」  背後から前に回した大きな手のひらを意味深にアーチボルドの下腹部を押さえるよう撫で、繋がった場所を少しだけ動かして刺激する。 「あっ……」  アーチボルドが甘く湿った声を漏らすと自然とそこもきゅっと締まり、あまりの可愛さに柊一は背後からうなじをきつく吸った。 「ホラ、早く……、してって言って……?」  αの強くて甘い誘惑に、アーチボルドは唇を小さくつぐんで一粒だけかすかに残った理性にどうにかしがみついていた。 「アーチー……はやく……」  ドクリドクリと中にいる雄が脈を打つ──。柊一が動かなくてもアーチボルドはすでに気が触れそうだった。 ──それを捨てれば……楽に……な、れる……。  アーチボルドは薄く開いた濡れる唇から最後の理性を零し落とす──。 「──して……」  とうとう快楽に陥落したメス(Ω)に柊一は黒い笑みを浮かべて満足そうに目を細めた──。  アーチボルドの返事を聞くや否や、柊一は恐ろしいほど激しく貫いてはアーチボルドを泣かせ、乱暴な行為を強い口付けで誤魔化してはアーチボルドを容赦なくどこまでも犯し、何度何度も中に己の欲望を注ぎ込んだ。  アーチボルドは何度も襲い来る激しい快楽に慄きながらも、強い絶頂を迎えるたびに柊一に助けを求めるみたいにしがみついた。  もう何も考えられなくなったアーチボルドは熱に浮かされた綺麗な青い瞳を涙で揺らしながら、柊一の雄を口に含んでは言われるまま、柊一好みに刺激して愛撫して、出されたものを素直に飲み干した。  柊一は従順なアーチボルドを向かい合って座らせ、柔らかな股関節を大きく広げさせ、自分の雄を深い場所まで自ら咥えさせては何度もアーチボルドに腰を振らせた。  その後も言葉通り、狂ったように柊一はアーチボルドを抱き続けた。  タクシーで自宅へと未だ意識朦朧なアーチボルドを連れて、保健室の何倍も広くて柔らかいベッドの上で何度も何度もアーチボルドの中に最後の一滴まで吐き出した。  柊一は初めて寝る相手の首筋を噛むようなことは流石に我慢したが、その反動のようにアーチボルドの白い肌のあちこちに跡をつけて回った。  すっかり疲れ果てたアーチボルドは半ば気絶に近い状態で眠りにつき、今は規則正しく寝息を立てて熟睡していた。  その無防備な寝顔すら柊一には未だ性的興奮の存在でしかなくて、危険思考の自分から逃げるように真水のシャワーでどうにか頭を覚まさせた。  柊一がタオルで髪を拭いながら再び部屋に戻っても、アーチボルドは強い睡眠薬でも盛られたかのように延々と静かに眠り続けていた──。 「……妊娠してたら、ヤバいよな。でもヒートだったし、おれ死ぬほど中出ししたしな……マジでやっちまったよなぁ……」  下衆な反省をしつつも、もし妊娠していたらこの反抗的なΩは自分のものになってくれるのだろうかと、蠱惑的な色香を孕んだ首筋を指でなぞる。 「気が狂いそうに良かった、お前の体……。俺、こんな感覚初めてなんだけど──お前は?」  隣に寄り添い耳元でそう囁くも、相手が返事をするはずもなく、柊一はアーチボルドの寝息につられてそのうち一緒に眠りについていた──。

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