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 夜の配信はなんだかまったりしていた。  金曜の夜で、家でお酒を飲みながら観ているという視聴者が多いようだ。  質問に答える感じで、ゆるくコミュニケーションをとっている。  先程カフェに寄ったら、順位は5位に上がっていた。 「はい。デビューできたら、端役でもなんでもいいんで、場数踏んで実力をつけたいです」  水戸くんが真剣に答えると、たくさんの視聴者さんが『ストイックだね~』とか言いながら、ジャラジャラとポイントを入れてくれた。  視聴者は、毎日無料のコインが付与されて、それ以上入れたい場合は課金する仕組みらしく、無料/有料でコインの色が違う。  最近は有料コインの割合が多くて、みんなこんなにお金を使って大丈夫なのかと、心配になってしまう。 [いやー、推しのイチャイチャ声が聞けるなんて、良い時代だw] [お金払えばみとくんをテレビで見れるようになるって考えると、超いいシステム] [たしかに笑]  やっぱり責任重大だな。  水戸くんは、『デビュー後のことは自分の自由にしていい』と言ってくれたけど、視聴者からしたら、せっかくお金を払ったのにすぐ辞めたなんていったら、怒りたくなるんじゃないだろうか。 [りくちゃん、なんか思い詰めた顔してない?] [だいじょぶ???] 「え? あ、すいません。考え事してました」 [あーお金のことなら心配要らないよ! お姉さんたちは、推しにお金を支払うことが生き甲斐だからね!] [コイン投げてストレス発散ww] [わかる笑]  なんだかお客さんにまで悩みがバレているようで――しかも、的確に励まされてしまって――恥ずかしい。 「理空は難しく考えすぎだよ」 「……そうかな」 「思春期って感じ」 「ええ? なにそれ、水戸くんだって同い年じゃ……んぅ」  急にあごを掴まれて、そのままキスされた。  チャットが湧く。 「理空の口の中って、ちょっと甘い気がする」 「そんなわけない」 「あるよ。ほら、舌出して」  舌の先っぽで、形を確かめるように、チロチロと舐めてくる。  僕は両腕にすがりついて、必死にそれに応えた。  自然と息が上がり、体が熱い。 「どうする? 理空がとろとろなの、みんなに見えちゃってるよ」 「ふぇ……、はずかし……」 「でもまだ電気は消さない。暗くしちゃうと、理空がどんな顔してるのか、見えなくなっちゃうもんね」  水戸くんは片手で布団を引き寄せ、僕たちの腰のあたりにふわっと乗せて、その中に手を突っ込んだ。  布団の中の手が、僕の太もものあたりを這い回る。  気を抜くとあらぬ声が出てしまいそうで、僕は口をぎゅっと結び、ふるふると首を横に振る。 「理空、どした? キス、気持ちいい?」 「ん……、きもちぃ、キス」  布団の中のことを言ったら、視聴者さんにバレちゃう。  そう思うのに、つい、僕も手を伸ばしてしまう。  そっと指を沿わせると、ズボン越しにも分かるくらい、水戸くんのペニスは膨れていた。  お互い、下着の中に手を入れる。  座った姿勢だから触りにくいけど、本格的に触ってしまったら、人様に見せられない顔になってしまうのは分かる。 「みとくん、いじわるしないで……」 「どうして? キス、嫌い?」  壁面ディスプレイをちらっと見ると、目を潤ませた自分が、真っ赤な顔で感じていた。  半開きになった口から舌がちらっと見えて、恥ずかしいのに、止められない。  僕は(すが)るように耳打ちした。 「は、だめ、もうだめ。暗くして。お願い」  水戸くんが片手でタブレットを操作し、R18モードに切り替わる。  部屋が暗くなると、僕は布団を蹴り飛ばして、四つん這いになった。 「はあっ、はあ、触って……っ」 「うん。りく、エッチして欲しそうだったもんね」  水戸くんはローションを取り出し、僕の中を探り始めた。  前立腺を刺激されて、身悶える。 「あぅ、あっ、ン、ん……っ、ひぁ」 「すごい。前、カウパーだらだらだよ。分かる?」 「ぁぅ……、きもちぃ、は、ぅ」 「挿れていい?」 「ん、んっ、挿れてっ。奥、とんとんして」  ずぷずぷと、太いものが埋め込まれてゆく。  僕は背中を反らし、声にならない声を上げる。 「あー、すごい。ぎゅうぎゅうだ」 「ひ、ひぁっ、……ぁ、ひっ」  ずるっ、ズチュッと、いやらしい音に混じって、水戸くんの押し殺した息遣いが聞こえる。 「……、りく、すき。かわいい」  好きとか言わないで。  いまそんな声で呼ばれたら、勘違いしてしまう。  僕は枕を噛んで声を押し殺していて、それなのに水戸くんは、我慢できないくらい激しく突いてくる。  自分が、泣いているのかよろこんでいるのか、分からない。  泣いてるみたいな声が出ちゃう。  けどほんとは、死んじゃいそうなほど気持ちいい。 「んッ、も、だめぇ、イッちゃ、う……っ、」 「あー……俺も、イク」 「……ぁ、あっ! はぁっ、イッ……あぁああっ……!…………ッ」  ドクドクと熱を吐き出しながら耳元でささやかれたこの言葉は、僕の心を掻き乱すのに十分だった。  ――すごい好きなの、分かって欲しい  ねえ、それは演技なの?  その声が揺れているのは、なんでなの? Day5 End.

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