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 二度寝から目覚めたゲーム配信は、めちゃくちゃ盛り上がった。  最終日の前日までやるのかと総ツッコミが入り、あしたもやると言ったら大爆笑され、頑張れと励まされ、大量にポイントが入った。  外デートは図書館で静かに過ごして、戻ってきたらけっこうポイントが入っていた。  水戸くんの予想どおり、外に来ている人が全然いなかったので、目立つことができたようだった。  全てが順調。  そしていよいよ、イベントだ。  開始前、水戸くんは僕の制服のネクタイを結び、ぽんと肩を叩いて言った。 「よし、完璧。可愛い。優勝間違いなし」  そう言う水戸くんの方が、完璧な仕上がりだ。  こんな人が学校にいたら、まぶしくて目が潰れそう。  いや、実際高校生なのだから、このキラキラオーラを浴びて暮らしている人たちが、実在しているのだけど……。  会場は最初のカップリングのときに使われたホールで、披露宴会場のように、4人掛けのテーブルがいくつも並んでいた。 「えーっと、俺たちは4位だから……あ、あそこだね」 「う!? あんな、一番前の正面!?」 「同じテーブルの3位カップルは、知らない人だな。ふたりとも、ミュージカル一科生みたいだけど」  隣のテーブルでは、きのうついに1位に躍り出たハルトさんとユーキさんが、仲良く手を振っている。 「慶介、森山くんも。おつかれ」 「ボクちゃんすごいやん! 三科の子がおるって注目されてんで」 「いえ……ハルトさんとユーキさんの方がすごいです。1位なんて」  ぺこぺこしていると、水戸くんが僕の服の裾を引っ張った。 「ほら、始まるよ。理空はこっち」 「あ、うん。ごめん」  ぼさっとしすぎだ。気合を入れないと。  3位の人たちはライバル意識が強いのか、ひと言も口を聞いてくれない。  水戸くんが当たり障りのない挨拶をしてくれて、僕もなんとなく頭を下げる。  席につくと、水戸くんがこそっと耳打ちしてきた。 「他人に愛想振り撒いちゃだめ」 「愛想……?」 「うん。どれだけ親切に見えても、みんなライバルなんだから。俺のことだけ信じて、俺だけを見てて? 分かった?」 「うん、分かった。そうする」  ここは戦場、ここは戦場と、自分に言い聞かせる。  正面の巨大ディスプレイには、視聴者のコメントや会場の配信映像が流れていた。  よく見れば、ホール内には何台もカメラがあって、上位の僕たちは、よく映してもらえている――自分の表情が固すぎて、情けなくなるけれど。 『お待たせしました! これより、BL杯合同イベントを行います! 今年の競技は、至ってシンプル。「相手の好きなところをできるだけたくさん書く」です!』  会場がざわつく。  僕も驚いて、水戸くんの腕をそっと掴んだ。 「何か必勝法みたいなの、思いつく?」 「……無理かな。下手に奇をてらったら視聴者さんにバレるだろうし、普段のキャラからブレない方がいい。だから、作戦とかは何も考えないで、理空が思ったとおりに書いてみて」 「思ったとおり……かあ。言葉にするの苦手なんだよな」 「大丈夫。俺の好きなところ挙げるだけだよ。簡単でしょ?」  そう言って微笑む笑顔には、僕の好きな水戸くんの魅力が詰まっていた。  そうだ。ありのままに、僕が彼を好きな理由を書いていけばいいんだ。  フリップと油性マジックが配られる。  上手とは言えない文字で、所属と名前を書き込む。  三科……と書くところで、手が震えた。  落ちこぼれがこんな場違いな場所にいて、他の参加者にどう思われているのか。  人と比べるのは怖い。  自分で自分を評するのは苦しい。  だからいまは、水戸くんの言うことだけを信じて、彼に全てを託したい。 『それでは、制限時間は1分。よーい、スタート!』

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