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第12話

下階を伺いながらゆっくり階段を降りる。慣れない爆音。 ゆっくり重い扉を開くとそこは別世界、これまた慣れない光景だ。 ほんの2回しか来てないからだろうか。 カウンターでおすすめのドリンクを作って貰い、周りを見渡した。 肩を抱かれている者、キスしている2人もいる。 場違い。その言葉しか浮かばなかったが、自然と視線を泳がせ、大悟を探していた。 あの日以来、大悟を大学で見ることは無くなった。 もしかしたら、このバーにいるかもしれない、と思った。 謝りたい....。 考えてみたら、別にあいつに口説かれた訳でもない。勝手に都合よく、二股を掛けられた気になっただけだ。 ドリンクを飲みながら、視線を走らせる。 いない。 「めっちゃ可愛いじゃん、1人?」 いきなり、見ず知らずの男に肩を抱かれた。 見たらわかるだろう、と睨みつけたが、効果はない。 「どっかで飲み直ししない?」 ....それもありかな、と自暴自棄になったときだった。 「ごめん、それ、先約だから」 大きな瞳を持つ、美青年が割って入り、動揺した。 「なんだ、聖のダチかよ」 「そっ、悪いけど」 「....聖?」 聞き覚えのない名前に眉を下げた。 「誰かお探し?」 目の前でにんまりと笑う。釘付けになった。可愛さと綺麗さを合わせ持つ笑顔。 色白の透明感のある綺麗な肌、大悟も美形だが、聖もまた卵形のパーツが整った小さな顔、セットされた金色の髪。 モデルだろうか、と惇生は少々、聖の持つ艶やかな雰囲気に圧倒されるかのようにたじろいだ。 「え、あ、大悟、を....」 「大悟?大悟ならいないよ」 「いない....?」 「知らないの?最近の....ってここで話すのもなんだわね」 聖は爆音のBGMに眉を潜めた。 「アタシんち近いから、アタシんちに行く?」 途端、思わず、身が竦んだ。 「心配しなくてもあんたを襲うつもりはないわ、タイプじゃないし」 タイプじゃない、と言われ、ホッと安堵する筈が物怖じしない口調に惇生はムッとした。
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