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第14話
ところが、普段は絶対に自宅のマンションには男を入れない大悟が男を入れてしまい、そこに母親が訪れ、大惨事になったのだ。
「大悟も変なところで優しいのよね...どうしても、大悟の部屋に行きたいとかって、断りきれなかったのよ」
手のひらで包んでいた冷めたコーヒーに視線を落とした。
「....何も知らなかった....。じゃ、大悟は....」
「実家でお説教中か、海外か、かしらね...ったく、ムカつく!大悟だけでも返して貰いたい!」
「返して貰いたい、て、大悟、聖さんと付き合ってたんですか?」
ぐっ、と聖は唇を噛み締めた。
「付き合える訳ないじゃない!大悟を思ったら。でも何回も寝たわ。大悟のセックス、凄く情熱的じゃない?蕩けるみたいなキスも」
思い起こすような口調に胸糞が悪くなり、途端、惇生は怒りも覚えた。
まるで、あなたは知らないでしょうけど、と言わんばかりだ、と。
「大悟に抱かれたらもう離れられない。そう思わない?」
「....帰ります!」
カウンターテーブルにカップを置き、聖を見ずに惇生は立ち上がった。
そんな惇生を秘かに見上げ、聖は微笑んでいた事も知らず。
外に出ると短い秋が終わり掛けていた。
「....セーターだけじゃ、もう無理かもな」
空を仰ぐと、幾つかの星を探した。
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