23 / 33

第23話

大悟のBMWを運転したいと意気込む惇生にキーを渡した。 「運転できんの?お前」 「バカにすんなよな。運転免許だってあるし、実家の親父の車だって運転した事くらいあるわ」 そうして、意気揚々と運転席に乗り込んだ。 「...早く出発しねーの?」 さっきまでの活気は何処へやら、ハンドルを握り締め、堅い表情のまま、微動だにしない惇生がいる。 「は、ハンドルのエンブレムが悪いんだ!ぷ、プレッシャーになる」 「...ガムテープでも貼って隠すか?多少、傷付けてもいいけど、心中は勘弁してくれよ」 ため息混じりの乾いた大悟の声。 「ば、バカにすんなって!お、俺だって!」 ようやく、エンジンを掛けると、のろのろと車が動き出し、思わず、大悟は額を抑えた。 徐行運転のようなスピードの為に、後部の車から次々とクラクションを鳴らされ、追い越しざまに怒鳴りつけられる。 BMWだけに尚更だ。 「...もうすぐ、コンビニがあるから、そこで止まって。運転、代わる。お前に任せてたら、切符切られかねないわ」 追い越しざまの運転手たちに散々、怒鳴りつけられ、既に惇生はしゅんとなっている。 大悟に言われた通り、近くのコンビニで停車した。 「BMWのプレッシャーってなんだよ」 大悟が笑うと、気抜けした惇生もようやく笑った。 「コーヒーでいいか?」 「うん」 助手席を降りると、大悟はコーヒーを買いに行き、惇生も車を降り、伸びをした。 「お待たせ」 「サンキュ」 コーヒーカップを手渡され、並んで飲んだ。 「で、大悟が行きたいところって?」 「着いてきたらわかる」 ふうん?と惇生は隣の大悟を見つめた。

ともだちにシェアしよう!