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第32話

両手で包むようにマグカップを持ち、惇生が切り出した。 「俺さあ、恋愛初心者かもだけど」 「かなりな」 大悟が片手でブラックを啜る。 「それはさ、大悟も大して変わんないんじゃない?」 「...俺が?」 「本気で好きになったのは1人だけ。心の隙間を埋めたくて、片っ端から男抱いてたんじゃない?ホントは寂しくて」 大悟は押し黙った。 「...俺さ、大悟が好きだった高二の奴とは違うよ。かなり生意気だし、つっけんどん。でもさ、大悟と知り合って、変わったよ、俺」 ふわり、マグカップの中を見つめたまま、微笑んだ。 「悠介の時はさ、気楽じゃいられなかった。いつも不安で。無理して笑った。好きなのに伝えられないもどかしさっていうのかな、悟られたくも無かったし...いつの間にか、悠介の事もどうでも良くなってた、なんでだと思う?」 「...俺?」 惇生が頷いた。 「最初、なにこいつ、て大嫌いだったのに、気がつけば夢中になってた。大悟となら、俺、戦えるよ」 「...戦う?」 拍子抜けした声が漏れた。 「うん。大悟を二度と傷つけたりさせないように。...なんなら、駆け落ちする」 ぷっと大悟が吹き出した。 「海外でも行くか?」 「んー...加藤くんと鈴木くんに会えないのは寂しい」 「お前に名付けられた猫たちが不憫すぎるしな」 「...なっ!可愛いんだからな!加藤くんと鈴木くん!」 「可愛いからこそ、その名前は可哀想」 そうして、暫くは言い合いをし、1つのベッドで眠った。 普段はわからない、子供のような大悟の寝顔を肩肘を付き、惇生は嬉しそうに笑みを浮かべ、暫く眺めた。

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