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第三章・3
「悦かったよ、翠くん。君のお父様には、この縁談を進めていただくようにお願いしてあげよう」
「……」
のろのろとスーツを身に着けながら、翠は自分勝手な丞の言葉を聞いていた。
聞いてはいるが、脳に、心に届かない。
それほど、このショックは大きかった。
着衣を終えた翠に、丞は相変わらず明るい青年を演じている。
嫌がる少年を犯したばかり、というのにだ。
「さて。じゃあ、庭園でも散策しようか。案内してくれる?」
そんな丞に、翠はささやかな、だが必死の抵抗をした。
「申し訳ございません。少々気分がすぐれませんので、僕はこれで」
「え? そう?」
「散策を御所望でしたら、屋敷の者に案内させます」
失礼します。
そう言い残し、翠は部屋を出た。
回廊に居た使用人を捕まえ、丞をもてなすよう伝え、北の屋敷へふらふらと向かった。
日は、すでに西に傾きかけていた。
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