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第四章・4

 5分だけ、との制約の中で涼雅は武生との面談を許された。 「掛けろ」 「失礼いたします」  ソファに掛け、涼雅は引き締まった顔つきで武生と対峙した。 「単刀直入に申し上げます。お見合いの席で、翠さまに何がおありになったのでしょうか」 「あいつの心身が、思った以上に脆弱だった。それだけだ」  それだけでは、納得いたしかねます、と涼雅は食い下がった。 「翠さまは、ああ見えてしっかりしたお方です。ただお見合いをされただけで、あのような……」 「では、有島さんとの間に、何かあったのだろう。私は途中で席を外したのだからな」 「有島さまと」 「あの御方には、翠の全てをお任せした。そうだな、婚前交渉を暗にお求めであった」  その言葉に、涼雅は殴られたようなショックを受けた。  明るい笑顔の翠が、脳裏をよぎった。  あんな素敵な笑顔を踏みにじり、汚すような真似を!  憤った表情の涼雅に、武生は冷たく言い放った。 「5分だ。出ていけ」 「……はい。ありがとうございました」  悲しく、悔しい内容ではあったが、これで翠が蝕まれた要因が、解った。  涼雅は、ソファから立ち上がった。

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