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第五章 新しい一歩

「素敵! 可愛らしい小屋だね!」 「いえ、翠さま。ここは私どもの働くカフェです」  郊外にある、ログハウス風のカフェに、涼雅と翠は到着した。  売店舗になっていた建屋を、涼雅が買い取ったのだ。  ここで、翠と二人で静かに暮らすつもりだった。 「翠さまには、主にハーブティーを淹れていただくつもりです」 「僕が得意だったこと、だね?」  その前に、掃除をしないと!  長い間放置されていた店は埃だらけで、観葉植物は枯れ果てている。 「清掃業者に頼みましょうか」 「ううん。僕、掃除をしてみたい」  涼雅は、そう言う翠にマスクを掛けさせ、ほうきを与えた。 「跳ね上げないように、そっと。そう、お上手ですよ」 「楽しいね!」  掃き掃除は翠に任せ、涼雅は拭き掃除をがんばった。 「お疲れでしょう。そろそろ、お昼にいたしましょうか」 「うん。なかなか綺麗にならないものだね」  カフェの二階が、居住スペースになっている。  そこで二人は、涼雅のこしらえたおむすびを食べた。 「翠さま。たくさんお召し上がりください」 「とっても、美味しいよ!」  おむすびの具は、梅干しと瓶詰の鮭フレークだ。 (お屋敷では、桜エビのおむすびを食べていらしたというのに)  この質素な暮らしに、翠が果たして耐えられるかどうか。  意地で彼を外に連れ出したのは、正解だったのか?  彼が音を上げるようならば、すぐにでも屋敷に戻る覚悟の涼雅だった。

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