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第五章・2

 翠は三日間がんばってカフェの掃除をしたが、四日目についに諦めた。 「いかがです? 翠さま。そろそろ降参なさっては」 「涼雅さんの言う通りだね。なかなかお掃除って大変だよ」  自宅にするには充分にきれいになったが、お客様を迎えるとなるとまだまだだ。  飲食物を提供する場所、でもある。  二人は店舗の清掃を業者に依頼し、オープンのために別の仕事を始めた。  ネットで検索し、食器やグリーンを選ぶのだ。 「このカップ、素敵だな」 「シンプルで、良うございますね」 「この鉢植え、可愛いね」 「アンスリウム、でございますね」  掃除より、こちらの作業の方が翠には合っているとみえる。  終いには、実物を見て確かめたい、と言い出した。 「繁華街は、人が多いと思われますが。翠さま、大丈夫ですか?」 「お薬は飲んでるし、今日は気分がいいから平気だと思うよ」  では、と涼雅は車を出した。 「何だか、景色が違って見えるなぁ」 「ですから、後ろのシートに掛けていただきたかったのですが」  どうしても、と無理を言って、ナビシートに座った翠だ。  事故があった際に最も危険な位置の席には、涼雅は翠を座らせたくはなかったのだが。 「今からでも、わたくしの後ろの座席に移っていただけませんか?」 「それは、いやだな。涼雅さんの運転する姿、カッコいいから見ていたいよ」  柄にもなく、涼雅は頬を染めた。

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