31 / 140
第五章・4
食器の次は、グリーンだ。
こちらは、現物を買い求めるつもりで花壇にやって来た。
ネット通販だと、イメージと違うものが届く恐れがあるからだ。
「レンタル、という方法もありますが」
「せっかくだから、買おうよ。その方が、愛着も湧くよ?」
そんな翠は、大きなパキラやモンステラの鉢の他にも、小さな寄せ植えにも夢中だ。
「天井から、蔓性のグリーンを垂らせないかなぁ?」
「緑いっぱいのカフェになりそうですね」
注文を終え、配達をお願いした後、涼雅はやはり一つの鉢植えを翠に差し出した。
「きれいな樹姿」
「オリーブです。よろしければ、お傍に置いてください」
「ありがとう、涼雅さん」
そのオリーブだけは、配達を頼まず涼雅の車に乗せた。
「早く、傍に置いておきたいからね」
心から喜んでくれている翠に、涼雅は心満たされる思いだった。
「そういえば、カフェの店名はどうしよう」
「翠さまのお好きな名前を、付けてください」
「じゃあ、そのまま『グリーン』でどうかな。緑いっぱいのカフェだし」
「いいですね。翠さまのお名前も、表現できます」
そんなつもりじゃなかったけど、と翠は照れ臭そうに微笑んだ。
「ね、以前の僕も、こんな風に植物が好きだったのかな」
「はい。自然をこよなく愛しておいででした」
ふと、翠の思考が止まった。
そして、別方向に動き始めた。
ともだちにシェアしよう!