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第六章・4
「祝いの花も無し、か」
新しくオープンした、カフェ・グリーン。
翠がその経営の一端を担うというのに、父・武生からも兄たちからも何の連絡もなかった。
「ランの鉢植えでも届くかと思っていたのに」
お可哀想な、翠さま。
涼雅は、溜息をついていた。
そしてその隣には、これまた溜息をつく翠が。
(翠さまも、胸を痛めておいでなのか)
しかし、翠は涼雅にこう言った。
「なかなか来ないね、お客様」
「そ、そうですね」
これは、しまった。
(翠さまは、私などよりずっと前を見ておいでだ)
そう。
今はもう、坂城家のことはいったん端へ寄せておこう。
大切なのは、このカフェが翠さまの憩いの場になることなのだから。
「まだ、午前中ですよ。きっと、午後になると忙しくなります」
そう笑顔を返して、涼雅は翠を元気づけた。
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